貯金箱にコインを入れる子どもたち
📌 この記事は現時点の情報にもとづく解説です

こどもNISAは「令和8年度税制改正の大綱」で導入が決まった段階の制度で、正式名称・細かなルール・口座開設の手続きなどは、2026年中に順次発表される見込みです。本記事は大綱および金融庁の公表資料をもとにした一般的な解説であり、今後内容が変わる可能性があります。最新情報は金融庁のサイト等でご確認ください。

まず30秒で。こどもNISAの基本

落とし穴の話に入る前に、制度の骨格だけ押さえておきましょう。

項目内容
対象年齢0歳〜17歳(18歳未満)
年間の投資枠60万円
生涯の投資上限600万円
投資できる商品つみたて投資枠と同じ投資信託のみ(成長投資枠はなし)
非課税期間無期限
引き出し原則として制限あり。12歳以降は一定の条件のもとで可能
18歳になったら大人の通常NISA(つみたて投資枠)へ自動的に移行
開始時期2027年1月(予定)

出典:金融庁「令和8年度税制改正の大綱の概要」(アクセスFSA 2026年2月号)

ポイントは、大人のNISAと違って「つみたて投資枠だけ」「年間60万円まで」という点と、子ども名義の口座で、原則すぐには引き出せないという点です。この2つが、後で紹介する落とし穴の多くにつながっています。

結論:こどもNISAの主なデメリット5つ

先に要点だけまとめます。こどもNISAには次のようなデメリット・注意点があります。詳しくはこのあと1つずつ解説します。

⚠️ こどもNISAの主なデメリット
  1. 投資なので元本割れの可能性がある(預貯金のような元本保証はない)
  2. 原則12歳まで引き出せない(すぐ使うお金には向かない)
  3. 成長投資枠がなく、投資できるのはつみたて投資枠の投資信託のみ
  4. 他の口座と損益通算できない(損失が出ても税金の相殺に使えない)
  5. 学費などで途中で取り崩すと、育ててきた運用益の非課税メリットがリセットされる

いずれも「制度が悪い」というより、使い方を誤ると損につながるタイプの注意点です。ここからは、特に間違えやすい5つの落とし穴として詳しく見ていきます。

落とし穴① 学費のために取り崩すと、増やしてきた「非課税のメリット」が戻ってこない

いちばん多い勘違いが、これです。「学資保険の代わりに、こどもNISAで大学の費用を貯めよう」という使い方。一見かしこそうですが、実はもっとも「もったいない」使い方になりかねません。

NISAには、売却すると翌年に投資枠が復活する仕組みがあります。ただし戻ってくるのは「元本(投資した金額)の枠」だけ。長い時間をかけて増やしてきた運用益の非課税メリットは、売却するとリセットされてしまいます。

出典:金融庁「NISA特設ウェブサイト よくある質問」(非課税保有限度額は簿価残高で管理され、売却分は翌年以降に再利用できる)

⚠️ たとえばこんなイメージ

0歳から積み立てて、600万円が17歳時点で800万円に増えたとします。この800万円を大学費用として全額売却すると、200万円ぶんの「これからも非課税で増え続けられたはずの運用」を手放すことになります。600万円の投資枠は翌年また使えますが、育ってきた運用のパワーはゼロからやり直しです。

18歳になると特段の手続きなく大人のNISA(つみたて投資枠)へ自動的に移行し、非課税でずっと運用を続けられます。

出典:金融庁「令和8年度税制改正の大綱の概要」(アクセスFSA 2026年2月号)

時間を味方につけた複利こそが最大の魅力なので、学費は「NISA以外の預貯金」から出し、NISAはできるだけ長く育てるのが基本です。どうしても取り崩すなら、値上がりしている商品ではなく、増えていない商品から売る方が損は小さくなります。

落とし穴② 親のNISAより先に、子どもの枠を埋めようとする

「子どものために」という気持ちから、自分(親)のNISAを後回しにして、先にこどもNISAを満額にしようとする方がいます。しかし優先順位としては逆になりがちです。

理由は2つあります。1つは、大人のNISAのほうが枠が大きいこと(年間360万円・生涯1,800万円)。もう1つは、こどもNISAは原則すぐに引き出せないこと。家計に余裕がある人ほど、まず自分の枠をしっかり使い、それでも余力があるときに子どもの枠を足すほうが、家庭全体では効率的です。

💡 おすすめの順番(余力に応じて)

①収入のある人(例:世帯の稼ぎ頭)が自分のNISAを優先 → ②配偶者の枠を活用(お金を渡す場合は後述の贈与に注意)→ ③さらに余力があれば、こどもNISA

落とし穴③ 「相続税対策になるから」と早めに子どもへ移す

「早いうちに子どもへ財産を移して相続税対策を」という考え方もありますが、多くの家庭ではそもそも相続税はかかりません。相続税がかかるのは全体の1割前後とされ、9割ほどの家庭には無縁の話です。

相続税対策が必要なほど資産のある人は、そもそも収入も多いため、年間60万円を子どもへ移したところで大きな効果はなく、結局は自分の資産運用も続けたほうが家庭全体では増えます。「相続対策のため」を主な理由にこどもNISAを優先するのは、多くの人にとって的外れになりやすいので注意しましょう。

落とし穴④ 「いつでも引き出せる」と思い込む(流動性リスク)

こどもNISAは、大人のNISAのように自由に売って現金化できるわけではありません。原則として払い出しに制限があり、12歳以降になって初めて、一定の条件のもとで引き出せる仕組みです。

出典:金融庁「令和8年度税制改正の大綱の概要」(アクセスFSA 2026年2月号)

12歳以降の引き出しには、子ども本人の同意が必要とされている点にも注意が必要です(名義はあくまで子どものため)。「急にまとまったお金が必要になったら解約すればいい」という感覚で、生活防衛資金まで入れてしまうのは危険です。すぐ使うかもしれないお金は、こどもNISAには入れないのが鉄則です。

落とし穴⑤ 贈与のしかたを間違えると、贈与税がかかることも

こどもNISAは子ども名義の口座なので、親や祖父母がお金を出すと、それは「贈与」にあたります。贈与税は、1年間に受け取った額の合計が110万円以下なら非課税(暦年課税の基礎控除)。こどもNISAの年間枠は60万円なので、それだけなら基礎控除の範囲に収まります。

出典:国税庁「No.4402 贈与税がかかる場合」(暦年課税に係る基礎控除額110万円)

⚠️ 合算に注意

贈与税は「受け取る側」で合算されます。こどもNISAへの60万円とは別に、お年玉やお祝い金などで50万円以上を受け取ると、合計が110万円を超え、超えた分に贈与税がかかる可能性があります。

「毎年60万円 × 10年で600万円、これは定期贈与にならない?」という心配もよく聞かれます。「毎年決まった額を渡し続けると、まとめて贈与したとみなされて課税されるのでは(=定期贈与)」というものですが、基本的には、毎年その都度110万円以内で贈与している限り、定期贈与にはあたらないと考えられます。「10年間で600万円を渡す」と契約書などで最初に約束しているわけではなく、あくまで毎年その年ごとに判断して渡しているためです。

📝 税金の判断は専門家へ

贈与や相続の扱いは、個々の家庭の事情によって結論が変わります。心配な場合は、税理士や税務署など専門家に確認するのが安心です。この記事は一般的な考え方の紹介にとどまります。

その他に知っておきたいデメリット・注意点

落とし穴①〜⑤以外にも、投資制度として押さえておきたい点があります。

元本保証はありません。こどもNISAは投資信託で運用するため、値動きによっては購入時より減ることもあります。銀行預金や、利率が決まっている学資保険とは性質が違う点を理解しておきましょう。長期・積立・分散で値動きのリスクは抑えられますが、ゼロにはできません。

他の口座と損益通算できません。通常の課税口座なら、損失を別口座の利益と相殺して税金を軽くできますが(損益通算)、NISA口座の損失はこの対象外で、税務上ゼロとして扱われます。値下がりした状態での売却は慎重に判断する必要があります。

成長投資枠がありません。大人のNISAと違い、投資できるのは「つみたて投資枠」の対象商品(金融庁の基準を満たした投資信託)だけです。個別株などには投資できないため、自由度は限られます。

出典:金融庁「NISA特設ウェブサイト」(NISAの一般的な仕組み)

こどもNISAをやめたほうがいい人・向いている人

デメリットを踏まえると、「今は急がなくてよい人」と「活用メリットが大きい人」に分かれます。ご家庭の状況と照らし合わせてみてください。

やめたほうがいい・急がなくてよい人向いている人
親自身のNISA枠をまだ使い切っていない人 すでに親のNISAを活用し、さらに非課税で運用する余力がある人
近いうちに使う予定のお金を入れようとしている人(原則12歳まで引き出せない) 子ども用の資金を家計と分けて、長期でじっくり育てたい人
「相続税対策のため」が主目的だが、そもそも相続税がかからない人(多くの家庭が該当) 児童手当などを、家計に追加負担なく積み立てに回したい人
元本割れをどうしても避けたい人(預貯金・学資保険向き) 値動きのリスクを理解したうえで、長期の複利効果を狙いたい人

「やめたほうがいい」というより、優先順位が後になるケースが多い、というのが実際のところです。親のNISAを使い切っていない段階なら、まずそちらを優先するほうが家庭全体では効率的です。

じゃあ、どう使うのが「正解」なの?

ここまでの落とし穴を裏返すと、失敗しにくい使い方が見えてきます。

✅ こどもNISAで後悔しないための5つのポイント
  1. 学費は「NISA以外の預貯金」から出し、NISAはできるだけ長く育てる
  2. まず親(収入のある人)のNISAを優先し、余力があれば子どもの枠を足す
  3. 「相続対策のため」を主な理由にしない(多くの家庭には不要)
  4. すぐ使うお金は入れない(原則12歳まで引き出せない前提で)
  5. お金を渡すときは、1人あたり年110万円以内を意識する

逆に、こどもNISAが向いているのは、すでに親のNISAを活用していて、さらに非課税で運用する余力がある人や、子ども用の資金を家計と分けて長期で育てたい人です。児童手当をそのまま積み立てに回せば、家計から追加の負担なく子どもの資産形成を進められる、という使い方もできます。

まとめ

こどもNISAは、2027年1月に始まる予定の、0〜17歳向けの非課税投資制度です。年間60万円・生涯600万円まで、つみたて投資枠と同じ投資信託で運用できます。ジュニアNISAより使いやすくなった一方で、「学費のために取り崩す」「親より先に埋める」といった“よかれと思った使い方”が、実は損につながるのが最大の注意点です。

大切なのは、制度の細かいテクニックより「長く、慌てずに育てる」という基本の姿勢。制度の正式なルールは2026年中に発表される見込みなので、続報が出たら改めて確認しつつ、2027年のスタートに向けて家庭の方針を整理しておきましょう。

よくある質問(FAQ)

主なデメリットは、①投資なので元本割れの可能性がある、②原則12歳まで引き出せない、③成長投資枠がなくつみたて投資枠の投資信託のみ、④他の口座と損益通算できない、⑤学費などで途中売却すると育ててきた運用益の非課税メリットがリセットされる、の5点です。いずれも使い方を誤ると損につながるタイプの注意点です。

制度自体が悪いわけではなく、多くの場合は「優先順位」の問題です。親自身のNISA枠をまだ使い切っていない人、近く使う予定のお金を入れようとしている人、相続税がそもそもかからない家庭などは、急いで始める必要はありません。反対に、すでに親のNISAを活用していて余力がある家庭には有効な選択肢です。

投資信託で運用するため、値動きによっては元本割れの可能性があります。また、学費などで運用益が出ている状態で途中売却すると、その後も非課税で増やせたはずの枠を失います。すぐ使うお金を入れず、長期で保有することでリスクは抑えられます。

2027年1月からの開始が予定されています(令和8年度税制改正の大綱にもとづく段階で、口座開設の手続きなど詳細は2026年中に順次発表される見込みです)。

ジュニアNISAは2023年末で新規の口座開設が終了しました。こどもNISAは、12歳以降なら一定の条件で引き出せる、非課税期間が無期限、18歳で大人の通常NISAへ自動的に移行する、といった点で使いやすくなっています。

※本記事は令和8年度税制改正の大綱および金融庁の公表資料をもとに、2026年時点の情報で作成しています。制度の詳細は今後変更される可能性があります。投資は元本割れのリスクを伴います。税務の取り扱いは個別事情により異なるため、詳細は税理士等の専門家にご確認ください。