日本銀行は2026年6月16日、政策金利を0.75%から1.0%へと引き上げました(※1)。1995年以来、実に31年ぶりに1%台となりました。これを受けてメガバンク3行は、普通預金金利を8月3日から0.3%→0.4%へ引き上げると発表しています(※2・3・4)。「やっと金利が上がる!」と思った方も多いはず。でも数字の中身を見ると、実態はかなり厳しいです。この記事で一つひとつ整理してみます。
そもそも「政策金利」が上がると、なぜ預金金利もローン金利も上がるの?
「仕組みが曖昧」という方のために、まずここから整理します。
政策金利=「お金の値段」の基準
日本銀行(日銀)は、銀行同士がお金を貸し借りするときの金利(政策金利)を決めています。これは「お金の値段の基準」です。銀行は私たちの預金を使って運用や融資をしていますが、日銀が設定する金利が上がると、市場全体の金利水準が引き上げられます。
なぜ預金金利もローン金利も上がるのか
日銀が政策金利を引き上げると、まず銀行同士がお金を貸し借りするときのコストが上がります。銀行は日銀や市場からお金を「仕入れて」、それを私たちに貸し出しています。仕入れコストが上がれば、貸し出すときの金利(=住宅ローンなどの金利)も上げざるを得ません。
同時に、銀行は私たちの預金を集めて運用・融資することで収益を得ています。市場金利が上がると運用で得られるリターンも大きくなるため、預金者に還元できる利息(=普通預金・定期預金の金利)も引き上げる余地が生まれます。まとめると、こういう流れです。
日銀が金利を上げる
→ 銀行のお金の「仕入れコスト」が上がる
→ ローン金利が上がる(借りる人には不利)
→ 同時に市場全体の運用リターンも上がる
→ 銀行が預金者に払える利息も増える
→ 預金金利が上がる(預ける人には有利)
変動型住宅ローンへの影響は少し遅れる
変動金利型の住宅ローンは、政策金利ではなく「短期プライムレート」という別の指標に連動しています。今回の利上げを受け、メガバンクは短期プライムレートも引き上げており、住宅ローンへの反映は数ヶ月後(三菱UFJは2026年9月から)になる見込みです。すでに固定金利で借りている方は影響を受けません。
政策金利の30年推移(1995〜2026年)
「なぜこんなに長い間、金利がゼロだったの?」という疑問をお持ちの方のために、30年の歴史を振り返ってみましょう。
| 期間 | 政策金利の動き |
|---|---|
| 1999年〜 | ゼロ金利政策スタート。バブル崩壊後の不況対応。 |
| 2001〜2005年 | 量的緩和政策。事実上0%が続く。 |
| 2016年〜 | マイナス金利導入。預けると「罰金」という異例の時代。 |
| 2024年3月〜 | 17年ぶりのマイナス金利解除。正常化へ。 |
| 2026年6月 | 政策金利が1%台に。1995年以来31年ぶり。 |
主な転換点の金利水準
| 年 | 政策金利 | 出来事 |
|---|---|---|
| 1995 | 0.50% | バブル崩壊後の低金利政策 |
| 1999 | 0.02% | ゼロ金利政策導入 |
| 2001 | 0.02% | 量的緩和開始 |
| 2006 | 0.25% | 量的緩和解除 |
| 2008 | 0.10% | リーマンショック |
| 2016 | −0.10% | マイナス金利導入 |
| 2024 | 0.25% | マイナス金利解除 |
| 2025 | 0.75% | 追加利上げ |
| 2026 | 1.00% | 31年ぶり1%台 |
主要銀行の最新金利一覧(2026年6月29日時点)
普通預金金利
出典:各銀行公式プレスリリース(※2・3・4・5)
| 銀行 | 現在の金利 | 改定後 | 改定日 |
|---|---|---|---|
| 三菱UFJ銀行 | 0.30% | 0.40% | 2026年8月3日 |
| 三井住友銀行 | 0.30% | 0.40% | 2026年8月3日 |
| みずほ銀行 | 0.30% | 0.40% | 2026年8月3日 |
| ゆうちょ銀行(通常貯金) | 0.30% | 0.40% | 2026年8月10日 |
| 楽天銀行(通常) | 0.30% | 未発表 | — |
| 楽天銀行(マネーブリッジ※a) | 0.38%(最大0.64%) | 未発表 | — |
| auじぶん銀行 | 0.31% | 0.41% | 2026年8月1日 |
| あおぞら銀行BANK(※b) | 0.75% | 1.00% | 2026年7月1日 |
※a 楽天証券との口座連携が条件。優遇金利の適用残高上限は1,000万円。
※b 1.00%は残高100万円まで。超過分(100万円超)は0.65%(改定後)。
定期預金金利(代表例)
| 銀行 | 1年 | 3年 | 5年 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 三井住友銀行 | 0.40% | 0.60% | 0.70% | 2026年6月28日現在 |
| みずほ・三菱UFJ銀行 | 0.40%前後 | 改定検討中 | 改定検討中 | 定期は検討中 |
| 楽天銀行(キャンペーン) | 1.20% | — | — | 〜7/31・新規のみ |
| auじぶん銀行(キャンペーン) | 1.20% | — | — | 〜8/31 |
| ソニー銀行(キャンペーン) | 1.25% | — | — | 〜8/31・1,000円〜 |
※キャンペーン金利は新規預入限定・期間終了次第終了。最新情報は各行の公式サイトでご確認ください。
「金利が上がった!」でも、物価には勝てていない現実
ここが一番大切なポイントです。金利が上がっても、同時に物価も上がっているため、実質的なお金の価値は目減りしている可能性があります。
2026年5月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)は前年比+1.4%の上昇(総務省統計局発表・※7)。先行きについては夏〜秋にかけて再び+2%を超える可能性があると複数の経済研究所が予測しています。
実質金利 = 名目金利(預金金利)− 物価上昇率
例)0.4%(メガバンク普通預金)− 1.4%(CPI)= −1.0%(実質マイナス)
普通預金に預けているだけでは毎年約1%ぶん「購買力が目減り」していることになります。
それでも「預け方」で差はつく
物価上昇に打ち勝つのは難しくても、どこに・どう預けるかで受け取れる利息は大きく変わります。100万円を1年間預けた場合の税引き後利息(概算)を比べてみましょう。
| 預け方 | 税引き後利息(年・概算) |
|---|---|
| メガバンク普通預金(0.4%) | 約3,200円 |
| 楽天銀行マネーブリッジ(0.38%) | 約3,000円 |
| あおぞら銀行BANK普通預金(1.00%・7月〜) | 約7,970円 |
| ネット銀行1年定期キャンペーン(1.20〜1.25%) | 約9,560〜9,960円 |
※税率20.315%で計算。預入額100万円・金利と残高が1年間変わらなかった場合の概算値。
注目が集まる「個人向け国債」と定期預金、どう違う?
金利が上昇する中で、個人向け国債への関心も高まっています。個人向け国債は財務省が発行する国の借金で、私たちが日本政府に直接お金を貸す仕組みです。銀行・証券会社などで1万円から購入できます。特に「固定5年」の金利はメガバンクの5年定期(0.70%)を大きく上回る水準で注目されています。
| 比較項目 | 定期預金(ネット銀行・1年) | 個人向け国債 固定5年 | 個人向け国債 変動10年 |
|---|---|---|---|
| 金利水準(2026年6月) | 1.20〜1.25%(キャンペーン) | 約1.86%(財務省発表) | 変動型(政策金利に連動) |
| 預入期間 | 1年 | 5年(固定) | 10年(変動) |
| 途中換金 | 可(ペナルティあり) | 1年後以降可(直近2回分利子の一部を差し引き) | 1年後以降可(同上) |
| 元本保証 | あり(ペイオフ範囲内) | あり(国が保証) | あり(国が保証) |
| 最低投資額 | 1,000円〜(銀行による) | 1万円〜 | 1万円〜 |
| 向いている人 | 短期間で使う可能性がある資金 | 5年確実に使わない資金 | 利上げが続くと考える方の長期資金 |
※国債の金利は毎月変わります。最新の発行条件は財務省公式サイトでご確認ください。
個人向け国債(変動10年)は政策金利の上昇に連動して金利が上がっていく仕組みなので、「今後も利上げが続く」と考える方には魅力的な選択肢です。一方で5年・10年と長期間お金が拘束される点は注意が必要です。
まとめ
- 日銀の追加利上げにより政策金利が1%に。1995年以来31年ぶりの水準です
- メガバンク3行の普通預金は8月3日から0.4%へ。ゆうちょは8月10日、auじぶんは8月1日
- あおぞら銀行BANKは7月1日に1.00%(100万円まで)へ先行改定
- ネット銀行の1年定期キャンペーンでは1.2〜1.25%台の商品も登場中
- ただし物価上昇率(コアCPI +1.4%)には届かず、実質金利はマイナスが続きます
- 個人向け国債(固定5年)は約1.86%でネット定期を超える水準。安全性を重視する長期資金向けに注目度が上昇中
出典
- 日本銀行「金融市場調節方針の変更について」(2026年6月16日)PDF
- 三菱UFJ銀行「円普通預金金利の改定について」(2026年6月16日)PDF
- 三井住友銀行「各種預金金利の変更について」(2026年6月16日)PDF
- みずほ銀行「円預金金利の改定について」(2026年6月16日)PDF
- ゆうちょ銀行「金利一覧」公式サイト
- 日本銀行「時系列統計データ 無担保コール翌日物レート(月次)」公式サイト
- 総務省統計局「2020年基準 消費者物価指数 全国 最新月次結果の概要」公式サイト
本記事の金利情報は2026年6月29日時点のものです。各行の金利は変動するため、最新情報は各銀行の公式サイトでご確認ください。
