ブルームバーグが報じた「胴元」発言とは何だったのか
ブルームバーグが最初に伝えた内容
「胴元」発言が広く知られたのは、ブルームバーグが日本時間9月9日の朝に配信した記事からでした。
アメリカのベッセント財務長官が、アメリカの大学で開かれたイベントで、円の取引について発言したという内容です。円について介入を行う際、日本銀行や当局が今後どのような対応を取るかを「かなり正確に把握している」と述べ、自分の見方に反対して賭けたいのならそうしても構わない、と語ったと伝えられています。自分には他の市場参加者が知らない情報があるという趣旨の発言もありました。
同じ日の午後、NHKもこの発言を報じています。NHKによると、ベッセント長官は市場参加者が持っていない情報を持っていると強調したうえで「今や私が『胴元』だ」と述べました。
7月末に行われた円買いは、日本とアメリカが協力して実施したものでした。
出典
ブルームバーグ|ベッセント長官、円売りに賭けるトレーダーをけん制「胴元は私だ」 2026年9月9日
NHK|米長官「今や私が『胴元』」 市場にない情報あると強調 2026年9月9日
「胴元」とはどういう意味か
「胴元」は、賭け事の場を開いて取り仕切る側の人を指す言葉です。勝負に参加して勝ち負けを競う側ではなく、場の外側にいて全体を見ている側の立場をいいます。
つまりこの発言は、円を売って利益を得ようとしている人たちに対して、自分は勝負の外側にいて手の内が見えている、という意味合いで使われたものです。
なお、ここで出てくる「為替介入」とは、国が自国のお金を売ったり買ったりして為替相場に働きかけることをいいます。日本では財務省が判断し、日本銀行が実際の売買を担います。
なぜ今、円高が進んでいるのか
円が上がり始めたのは、発言より前だった
円高が進み始めたのは9月の初めで、「胴元」発言より前です。グラフを見ると、9月2日から下がり続けているのが分かります。
では何が円を押し上げているのか、順番に見ていきます。
日本の金利が上がりそうだから
いちばん大きいのはこれです。
日本銀行は9月17日と18日に、金利を決める会議(金融政策決定会合)を開きます。市場では、この会議で金利が引き上げられるとの見方が広がっています。
日本の金利が上がると、円で預けたり運用したりして得られる利息が増えます。すると円を持っておきたいと考える人が増える。だから金利が上がりそうだという段階から、円が買われやすくなります。
アメリカが円安の是正を後押ししているから
8月30日、ベッセント長官は日本銀行の植田総裁と会談しました。アメリカの財務省が9月1日に公表した会談の概要には、円が安すぎる状態に対処するために日本が取る措置を強く支持する意向が示されています。円安が日本国内の物価上昇の一因になっている、という指摘も記されていました。
「胴元」発言も、この流れの延長線上にあります。
7月末に国が介入した記憶があるから
グラフの7月末で線が急に下がっているのが、日本とアメリカが協力して円を買った場面です。
こうした介入が一度実際に行われると、「また入ってくるかもしれない」という警戒が残ります。その警戒があるあいだは、円を売り続けることがしにくくなります。今回、介入は行われていませんが、この記憶が円安に戻る力を弱めているとみられています。
日米で説明が食い違っている
この件には、日本とアメリカで説明が違っている部分があります。
アメリカ側は、日本にリフレ政策をやめるべきだと伝えたと説明しています。
物価が下がり続ける状態から抜け出すために、金利を低く保ってお金を借りやすくし、あわせて国も予算を使う政策のこと。日本が長くとってきた考え方です。アメリカ側は「日本はもう物の値段が下がり続ける国ではなくなったのだから、この前提の政策は終わりにすべきだ」という趣旨を伝えたとしています。
一方で片山財務相は9月3日、そうした注文は受けていないという趣旨で「特に注文はない」と語りました。
どちらが正しいかは分かりません。ただ片方の説明だけを読むと、違う印象を持つことになります。
逆に、円安へ戻す力も働いている
円高の材料ばかりが並んでいるわけではありません。原油価格の上昇などは、円安の方向に働く材料として報じられています。円高と円安、両方の力が引き合っている状態です。
出典
日本銀行|外国為替市況(日次)
日本銀行|金融政策決定会合の運営(2026年の会合日程)
米国財務省|READOUT: Secretary of the Treasury Scott Bessent's Meeting with Bank of Japan Governor Kazuo Ueda 2026年9月1日
日本経済新聞|片山財務相「特に注文はない」 リフレ政策言及のベッセント米財務長官から 2026年9月3日
オルカンの評価額は、株価と為替の2つで動く
新NISAを使って、オルカンをはじめとした海外に投資する投資信託を持っている方は多いと思います。こうした商品は為替の動きが評価額に反映されるため、足元の円高が進んだ分だけ、数日前より評価額が下がっているはずです。
円高になると、株価が動かなくても評価額は下がる
オルカンのように世界中の株を買う投資信託は、買っている中身が外国の会社の株です。その代金は外国のお金で払われています。だから円で見た評価額は、2つの理由で動きます。
ひとつは現地の株価です。もうひとつが為替です。
株価がまったく動いていなくても、円高が進めば円で見た評価額は下がります。逆に円安のときは、株価が動いていなくても評価額が増えて見えます。
これが、目論見書に書かれている「為替リスク」の中身です。何かの失敗で起きるものではなく、海外に投資すると決めた時点で必ず付いてくるものです。
下がって見えるとき、原因は分けて確認できる
評価額が下がっているとき、株価のせいなのか為替のせいなのかは、分けて確認できます。
投資信託を運用している会社は、毎月レポートを公表しています。そこに、その月の値動きの要因が書かれています。「なんとなく下がった」で終わらせず、どちらが効いていたのかを見ておくと、次に同じことが起きたときに落ち着いて受け止められます。
円高で評価額が下がっても、積立をやめる理由にはならない
十数年後のためのお金なら、いまは通過点
円高で、これまで積み立ててきた資産全体の評価額は下がっているかもしれません。
ただ、その運用がそもそも老後資金のためだったり、少なくとも十数年後の自分や家族のためのお金だったりするなら、いまの水準は通過点です。使う時期がまだ先にあるお金は、途中の一時点の評価額で結果が決まりません。
円高のいまは、同じ金額で口数を多く買える
毎月同じ金額を積み立てていると、基準価額が下がった月は、同じ金額で買える口数が増えます。
毎月決まった金額で買い続ける方法。価格が高い月は少なく、安い月は多く買うことになるため、平均の買値がならされていきます。積立投資はこの仕組みで動いています。
そして口数が増えていれば、あとで基準価額が上がったときに増える金額も大きくなります。同じ値上がり幅でも、持っている口数が多いほど金額が大きくなるという計算の話です。
金融イベントの日程を知っておくと、心の準備ができる
9月は、日銀の金融政策決定会合をはじめ、国や中央銀行が政策や統計を公表する予定が集中しています。そのぶんニュースは増えます。
日程を先に知っておくと、値動きに一喜一憂しすぎずに済みます。
円高の局面での積立の続け方について、無料で相談できるサービスがあります。
