- 1万円の寄附に対し、返礼品や送料、事務費などに平均4790円が使われる
- 一方、寄附した人が住む自治体では、住民税が平均7150円減る
- そのため、全国の自治体を合計すると、寄附による受入額よりも「経費+住民税の減収」のほうが大きくなり、約2592億円のマイナスになる
- ただし、経費として支出されたお金が消えるわけではない。返礼品を生産する農家や食品会社、運送会社、仲介サイト、決済会社などの売上になる
- 返礼品の内容だけで寄附先を選ぶのではなく、寄附金の使い道を重視することも、制度を考えるうえで重要
出典:総務省 現況調査(令和8年度実施)。1万円あたりは編集部計算
東京都の「2255億円の赤字」は、何を引き算した数字?
計算方法はシンプルです。
受け取った寄附額 − 返礼品などの経費 − 住民税の減収
出典:会計検査院 随時報告(2026年6月12日) の「決算への影響額」の定義
東京都の場合、自治体が受け取った寄附額は162億円。そこから経費66億円と、住民税の控除による2351億円の減収を差し引くと、2255億円のマイナスになります。
出典:総務省 現況調査(令和8年度実施)・総務省 自治体別データ。編集部が集計し、朝日新聞の試算値と一致
ここでいう「東京都」は、東京都庁だけを指しているわけではありません。23区や市町村を含む、東京都内の自治体の合計です。ほかの都道府県も同じ方法で集計されています。
なお、東京都庁そのものは2025年度の指定申出書を提出していないため、都に対する寄附は特例控除の対象外です。つまり162億円は、実質的に都内の区市町村が集めた金額です。
出典:総務省 自治体別データ の留意事項
赤字・黒字が大きかった都道府県
| 区分 | 都道府県と金額 |
|---|---|
| 赤字 | 東京都2255億円、神奈川県846億円、大阪府489億円、埼玉県481億円、愛知県469億円など(計19都府県) |
| 黒字 | 北海道709億円、宮崎県281億円、山梨県228億円など(8道県で黒字が100億円超) |
出典:朝日新聞(2026年8月26日)。上記の総務省データから編集部が同じ式で再計算し、8道府県・赤字19都府県・黒字100億円超8道県まで一致
都市部で赤字が大きく、地方で黒字が大きくなるのは、都市部から地方へ財源を移すという制度の目的に沿った結果でもあります。
実際、北海道は道内の自治体を合計すると1888億円の寄附を受け入れています。一方、人口約1430万人の東京都の受入額は162億円でした。
出典:総務省 現況調査(令和8年度実施)、東京都の人口(推計)令和8年7月1日
問題は、財源を移すこと自体だけではありません。その過程でどれだけの経費が発生しているのかも重要です。
1万円を寄附すると、お金はどこへ行く?
億円単位では分かりにくいため、2025年度(令和7年度)の全国平均を1万円に置き換えてみます。
1万円を寄附した場合のお金の流れ
| お金の動き | 割合 | 1万円あたり |
|---|---|---|
| 自治体が受け取る寄附 | 100% | 10,000円 |
| 返礼品の調達費 | 26.5% | ▲2,650円 |
| 送料 | 5.7% | ▲570円 |
| 広告・決済などの費用 | 2.2% | ▲220円 |
| 事務費など | 13.6% | ▲1,360円 |
| 経費の合計 | 47.9% | ▲4,790円 |
| 寄附を受けた自治体に残る額 | 52.1% | 5,210円 |
| 寄附者が住む自治体の住民税の減収 | 71.5% | ▲7,150円 |
| 全国の自治体を合計した収支 | ▲19.4% | ▲1,940円 |
出典:総務省 現況調査(令和8年度実施)。住民税の減収の割合と差し引きは編集部計算
1万円の寄附を受けても、返礼品や送料などの経費を差し引くと、寄附を受けた自治体に残るのは平均5210円です。
一方、寄附をした人が住んでいる自治体では、住民税が平均7150円減ります。
そのため、全国の自治体を合計すると、受け入れた1万円よりも「経費」と「住民税の減収」の合計額が大きくなり、約1940円のマイナスになる計算です。
実際の2025年度の数字では、寄附の受入額が1兆3314億円、経費が6382億円、住民税の減収が9524億円。差し引きすると、約2592億円のマイナスになります。
なぜ「構造的に赤字」になりやすいのか
兵庫県芦屋市の高島崚輔市長は2026年6月、現在のふるさと納税について「構造的に必ず赤字になる仕組み」と指摘しています。
ポイントは、寄附額に対する経費の割合と住民税の減収額の割合です。
2025年度は、経費が寄附額の47.9%、住民税の減収が71.5%でした。この2つを単純に足すと、
47.9% + 71.5% = 119.4%
となり、寄附額の100%を上回ります。つまり、寄附額が増えても、この比率が同じ水準で続くなら、全国の自治体を合計した収支は赤字になります。
ただし、これは「ふるさと納税をすれば、寄附者本人が119.4%を負担する」という意味ではありません。ここで比較しているのは、寄附を受ける自治体の収入と、制度全体に伴って発生する自治体側の支出・税収減です。
なお、経費の上限は制度上も定められています。返礼品の調達費は寄附額の3割まで(地方税法)、送料や事務費を含む経費全体は5割まで(総務省告示)です。2025年度の実績47.9%は、この5割の上限に近い水準です。
「1年ずれ」が赤字額を分かりにくくする
高島市長のnoteでは、住民税の減収分を「およそ6割」としています。これは、寄附の受入額と控除額を同じ年度で比較した場合の数字です。
ふるさと納税では、寄附をした翌年度の住民税から控除されるため、寄附額と税収減を正確に対応させるには、原則として1年ずらして見る必要があります。このずれを考慮すると、赤字額は大きくなります。
控除額をどの年度で差し引くかで、赤字額が変わる
| 計算方法 | 2024年度 | 2025年度 |
|---|---|---|
| 同じ年度の控除額を差し引く | ▲863億円 | ▲1809億円 |
| 寄附と対応する翌年度の控除額を差し引く | ▲1914億円 | ▲2592億円 |
出典:▲863億円は会計検査院 随時報告(2026年6月12日)(2024年度)。ほかの3つは総務省 現況調査(令和8年度実施)をもとにした編集部試算
ふるさと納税の利用が毎年増えている時期には、寄附が先に増え、住民税の控除が翌年度に反映されます。そのため、同じ年度の数字だけを比べると、実際より赤字が小さく見えることがあります。
会計検査院の報告によると、2017年度以降で自治体全体の収支がプラスだったのは2020年度(211億円)と2021年度(18億円)の2年だけで、ほかの年度はすべてマイナスでした。この2年は、受入額が前年度から急に増えた一方、住民税の控除がまだ追いついていなかった年にあたります。
「赤字」でも、お金そのものが消えたわけではない
ここは、ふるさと納税の収支を考えるうえで重要なポイントです。
経費として支出された6382億円は、文字どおり消滅したわけではありません。返礼品を生産する農家や食品会社(調達費3528億円)、商品を運ぶ運送会社(送付費756億円)、決済会社(196億円)、仲介サイトへの委託などを含む事務費(1809億円)の収入になります。
つまり、自治体の財源の一部が、民間事業者などへの支払いに移ったと考えることができます。特に返礼品が地域の事業者によって生産されている場合、そのお金の一部は地域の産業に残ります。
一方、地域外の事業者への支払いが多ければ、地域内に残るお金は少なくなります。
仲介サイトへの手数料はどれくらい?
その中でも議論になっているのが、ふるさと納税の仲介サイトに支払われる手数料です。
2025年度は、寄附の97.2%が仲介サイトを経由していました。総務省の調査では、事業者への支払総額は2433億円で、そのうち返礼品代と送料を除いた実質的な手数料などが1490億円。寄附額に対して11.5%にあたります。
2024年度の調査では、支払額の上位4事業者だけで1249億円、全体の90.6%を占めていました。参議院の総務委員会も2025年3月31日の決議で、手数料の増加について調査を求めています。
出典:総務省 ポータルサイト支払額調査(2026年5月12日)、総務省 指定基準の改正等について(令和7年6月17日)(参議院・総務委員会決議)
総務省は2026年5月22日、この水準を問題視し、さとふる、楽天グループ、アイモバイル、トラストバンクなどが加盟する団体に手数料の引き下げを要請しました。各社の回答期限は2026年8月31日です。
出典:日本経済新聞(2026年5月22日)。回答期限は報道による
実質的な手数料の割合は前年も11.5%で、大きな変化はありませんでした。手数料の引き下げがどの程度進むのかは、今後の数字を見る必要があります。
なお、2026年9月に公表される2025年度分からは、自治体が1つの支払先に100万円以上を支払った場合、その支払先の名称・支払額・支払目的を公表することが義務づけられます。どのサイトにいくら払ったのかが、自治体ごとに見えるようになります。
ふるさと納税は「失敗」なのか?
東京都の2255億円の赤字だけを見て、「ふるさと納税は失敗だ」と判断するのは適切ではありません。
北海道が709億円、宮崎県が281億円の黒字となっているのは、都市部から地方へ財源を移すという制度の目的に沿った結果だからです。
一方で、2025年度の数字を見ると、財源を移す過程で発生する経費が大きいことも分かります。全国で1兆3314億円の寄附を集める一方、6382億円が経費として支出され、寄附者が住む自治体では9524億円の住民税収が減りました。
住民税は、学校や道路、福祉、子育て、防災、ごみ収集など、住民サービスを支える財源です。
そのため、ふるさと納税を評価するときは、「地方にどれだけお金が移ったか」だけでなく、その移転のためにどれだけの経費がかかったのかも見る必要があります。
寄附先は「返礼品」だけで選ばない
この構造は、ふるさと納税を利用する側の選び方にも関係します。
寄附者の自己負担は原則2000円ですが、自治体側では返礼品の調達や配送などに費用がかかります。2025年度は、返礼品と送料にかかった費用を合わせると、寄附額の平均32.2%でした。
出典:総務省 現況調査(令和8年度実施)。自己負担2000円は会計検査院 随時報告(2026年6月12日)
返礼品の内容だけで寄附先を選ぶと、より多くの経費をかけて返礼品を用意している自治体ほど選ばれやすくなる可能性があります。
そこで、返礼品だけでなく、寄附金が何に使われるのかを確認して選ぶ方法があります。総務省の調査では、寄附の使い道として具体的な事業を選べる自治体は586団体(32.9%)で、そのうち516団体が目標額や募集期間を定めるクラウドファンディング型を実施し、1547事業に333億円が集まりました。
高島市長が提案しているのも、返礼品ではなく「使い道」を重視して寄附先を選んでもらう考え方です。芦屋市では、2024年度に約11.8億円の税収が流出し、市民1人あたりの流出額が全国の市で最も大きかったとして、寄附金を公立学校の教育など具体的な事業に充てる取り組みを進めています。
ふるさと納税をするときの考え方
ふるさと納税を利用するなら、次の順番で考えると分かりやすいでしょう。
- まず控除の上限額を確認する。上限を超えた分は十分な控除を受けられず、自己負担が増えるため注意が必要です
- 返礼品の還元率だけでなく、寄附金の使い道を見る。どの事業に使われるのかが具体的に示されている自治体を選ぶ方法があります
- 返礼品を選ぶなら、地域の事業者にお金が残りやすいものを選ぶ。地元産の米、精肉、果物、魚介などは、その地域の生産者や事業者を直接支えることにつながります
- 自分が住む自治体の税収が減る仕組みだと理解しておく。これはふるさと納税の「副作用」というより、制度そのものに組み込まれた仕組みです
- ふるさと納税の上限額だけでなく、税・保険・資産運用まで幅広く相談できる
- 担当FPの口コミ・実績を事前に確認してから予約できる
- 完全オンラインで、全国どこからでも相談可能
2026年10月からは返礼品のルールも変わる
国は、ふるさと納税が単なる「節約型のECサイト」のようになることに歯止めをかける方向に動いています。2026年10月からの指定に適用される告示改正では、返礼品を「地場産品」と認める条件が厳しくなります。
- 区域外で作られた製品にロゴを付けただけのグッズは、自治体が広報の目的で自ら調達・配布・販売した実績がなければ認められない
- 製造・加工品は、区域内で価値の過半が生じたことを製造者が証明し、自治体が寄附の募集開始日までにその内容を公表する
- 返礼品の調達費は、一般販売価格も併せて公表する。合理的な理由なく一般販売価格より高く調達しないよう通知される
出典:総務省 指定基準の見直し等(令和7年6月24日)、総務省 指定基準の改正等について(令和7年6月17日)
総務省の資料では、輸入品の付加価値をかさ上げして地場産品と説明していた疑いのある例として、米国産の高級ワインが挙げられています。
今後は、返礼品の豪華さだけでなく、寄附したお金が地域にどれだけ残り、どのような事業に使われるのかが、自治体を選ぶうえでより重要になりそうです。
よくある質問
自己負担2000円を除いた分が、所得税と住民税から控除されます。住民税だけで見ると、2026年度の課税では全国で9524億円が減りました(総務省「ふるさと納税に関する現況調査結果(令和8年度実施)」)。寄附額に対して約7割にあたり、1万円の寄附なら住民税が約7150円減る計算です。減るのは寄附した人が住む自治体の税収で、学校や道路、福祉、ごみ収集などを支える財源です。
自治体が返礼品の調達に使える金額は、地方税法で寄附額の3割までと定められています。2025年度の全国平均は26.5%で、1万円の寄附なら2650円ほどです。送料や広告費、事務費を含めた経費全体の上限は総務省告示で5割とされ、2025年度の実績は47.9%でした(総務省「ふるさと納税に関する現況調査結果(令和8年度実施)」)。
いいえ。この試算は都道府県と、その中の市区町村を合計したものです。「東京都」には23区や市町村も含まれます。内訳は受入額162億円、経費66億円、住民税の減収2351億円です。東京都庁そのものは2025年度の指定申出書を提出しておらず、都への寄附は特例控除の対象外なので、162億円は実質的に都内の区市町村が集めた金額です(総務省の自治体別データ)。
どちらも同じ式で、住民税の控除額をどの年度で差し引くかが違います。会計検査院の随時報告「地方財政計画の事後検証等の状況について」(2026年6月12日)は、2024年度の受入額1兆2727億円から同じ年度の住民税控除額7688億円と募集経費5901億円を差し引いて863億円のマイナスとしています。ふるさと納税の控除は翌年度の住民税に反映されるため、寄附と対応させて翌年度の控除額で計算すると2024年度は約1914億円になります(編集部試算)。
制度をどう評価するかとは別に、控除の上限額の範囲内で寄附することは、寄附した人にとって不利にはなりません。編集部としては、先に上限額を確認すること、返礼品の還元率だけでなく寄附金の使い道が具体的に示されている募集から選ぶことをおすすめします。
出典一覧
- ふるさと納税に関する現況調査結果(令和8年度実施)2026年7月31日|総務省自治税務局市町村税課(PDF)
- ふるさと納税に関する現況調査 関連資料(自治体別の受入額・経費・控除額)|総務省
- 地方財政計画の事後検証等の状況について(会計検査院法第30条の2に基づく随時報告、2026年6月12日)|会計検査院
- ふるさと納税のポータルサイト運営事業者への支払額等に係る調査結果の公表(2026年5月12日)|総務省
- ふるさと納税の指定基準の見直し等(令和7年6月24日)|総務省
- ふるさと納税の指定基準の改正等について(令和7年6月17日)|総務省市町村税課(PDF)
- 「東京都の人口(推計)」(令和8年7月1日現在)|東京都
- ふるさと納税「赤字」19都府県 25年度、東京都は2255億円に(2026年8月26日)|朝日新聞
- ふるさと納税、構造的に必ず赤字です。なぜ赤字になるか、解説してみます。(2026年6月14日)|高島りょうすけ・芦屋市長
- ふるさと納税の手数料下げ、仲介サイトに要請 総務省(2026年5月22日)|日本経済新聞
本記事は2026年8月26日時点で確認できる公表資料・報道に基づいています。金額は原則として総務省「ふるさと納税に関する現況調査結果(令和8年度実施)」と同調査の自治体別データ、および会計検査院の随時報告の公表値です。都道府県別の収支、1万円あたりの内訳、全国の合計収支は、これらの公表値を同じ式に当てはめて編集部が計算しました。朝日新聞の記事本文は有料会員向けのため、同紙が公表している金額については総務省の一次資料から同じ式で再計算し、一致を確認しています。制度内容は今後変更される可能性があります。
