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そもそも「骨太の方針」とは?
「骨太の方針」は、国が毎年夏に閣議決定する「お金の使い方の設計図」です。正式名称は「経済財政運営と改革の基本方針」。ここで決まった方向性が、この後の予算編成に流れていきます。
- 8月末:各省庁が予算を要求(概算要求);
- 12月:政府の来年度予算案が固まる;
- 翌年3月:国会で予算が成立し、4月から実行。
つまり骨太の方針は、来年度以降の税金・社会保険料・給付のあり方を決める「出発点」です。ここに書かれた方針が、数年かけて私たちの家計に反映されていきます。
今回の骨太の方針で決まった主なこと
今回のキーワードは「強い経済」と「責任ある積極財政」です。家計に関わる範囲で、決まったことを整理します。
① 財政の「ブレーキ」をゆるめた(ここが今回いちばんの注目点)
これまで国は「基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)の黒字化」=税収の範囲内で政策の支出をまかなうことを最大の目標にしてきました。
今回はこの黒字化目標を前面から外し、代わりに「債務残高の対GDP比を安定的に引き下げる」という目標に切り替えました。かみくだくと「借金の“額”そのものより、経済の大きさに対する借金の“比率”を下げていければよい」という考え方です。経済(GDP)が伸びれば多少支出が増えても許容される、という発想で、成長を優先する姿勢が鮮明になりました。
② 成長分野に「上限なし」で予算を回す
AIや半導体など17の成長分野に対し、予算要求の上限を設けない「強く豊かな日本」投資枠を新設。官民あわせて370兆円超の投資を見込みます。あわせて、緊急時に組む「補正予算」に頼りすぎる財政運営からの脱却も掲げました。
③ 食料品の消費減税は「8月上旬までに結論」=先送り
家計への影響が大きい飲食料品の消費減税(実質ゼロ)は、方針決定の「時期」だけが書かれ、具体案は今回示されませんでした。年5兆円規模とされる大型政策ですが、8月上旬の続報待ちです。
なぜ「積極財政」が「国債金利の上昇」につながるのか
ここが今回の記事の本題です。骨太の方針の方向性と、先日の長期金利急騰は、次のような流れでつながっています。
満期までの期間が長い(一般に10年)国債の利回りのことです。住宅ローンの固定金利、企業の借入金利、保険会社の運用利回りなど、社会のさまざまな金利の「基準」になります。日銀が直接コントロールする政策金利(短期金利)とは別物で、市場での国債の売買によって日々動きます。
流れを1本の線で追うと、こうなります。
- 積極財政に舵を切る(PB黒字化を見送り、上限なしの投資枠を新設);
- → 国債(国の借金)の発行が増えやすいと市場が受け止める;
- →「将来きちんと返せるのか」という財政への懸念が高まる;
- → 国債を持ち続けたくない投資家が増え、国債が売られる;
- → 国債の価格が下がる。価格と利回りはシーソーの関係なので、長期金利(利回り)が上がる。
実際、今月初めには長期金利が一時2.825%と約30年ぶりの高水準まで上昇しました。これは高市政権の積極財政による財政悪化リスクを意識した債券売りが背景でした。今回の骨太の方針は、その「積極財政」を正式な国の方針として固めたもの、という位置づけになります。
さらに今回、決定に至る過程で日銀(日本銀行)に関する記述が「利上げをけん制する内容」と市場に受け止められ、長期金利が急騰する一幕もありました。政府は日銀の独立性に配慮する文言を加えて火消しを図りましたが、骨太の方針の一言一句が金利を動かしうる、という状況が続いています。
国債金利が上がると、私たちの生活はどうなる?
長期金利の上昇は、政府の財政と私たちの家計の両方に跳ね返ってきます。プラス面・マイナス面の両方を見ていきましょう。
マイナス面①:国の「利払い費」が増え、社会保障にしわ寄せ
国は多額の国債を発行しているため、金利が上がると毎年の「利払い費」が膨らみます。予算の中で利払い費の割合が増えると、その分ほかの政策に回せるお金が圧迫されます。
そのしわ寄せが向かいやすいのが社会保障です。今回の骨太の方針でも、現役世代の保険料は「上昇を止めて引き下げを目指す」とした一方、その原資として高齢者の医療費窓口負担の見直し(応能負担)や、介護保険2割負担の対象拡大の検討、市販薬と似た薬(OTC類似薬)の保険給付見直しなど、給付を絞る方向の見直しが並びました。金利上昇は、こうした「自己負担増」の流れを後押ししかねません。
マイナス面②:住宅ローンの金利が上がりやすい
長期金利は住宅ローンの固定金利の基準です。金利が上がっている今、これから固定で借りる人の返済負担は増える方向です。さらに、将来的に政策金利(短期金利)も上がれば、変動金利の返済額増にもつながります。
マイナス面③:円安・インフレが長引くリスク
財政への信認や金融政策をめぐる市場の思惑は、為替の円安を招くことがあります。円安が進むと輸入品やエネルギー価格が上がり、生活コストをさらに押し上げます。
プラス面:預金・個人向け国債の「受取利息」は増えやすい
一方で、金利上昇は「守りの資産」にとってはプラスの側面もあります。定期預金の金利は上乗せの動きが出やすく、個人向け国債の利率もこのところ上昇が続いています(直近の7月募集分は変動10年1.80%、固定5年1.95%、固定3年1.56%)。「借りる側」には逆風、「預ける側」には追い風という、両面を持つのが金利上昇局面の特徴です。
じつは政府が個人向け国債の販売に力を入れている背景にも、こうした財政事情があります。国内の個人預金を国債保有へ誘導し、安定した資金調達ルートを確保したいという思惑があるためで、「積極財政による金利上昇」と「個人向け国債の高金利化」は表裏一体の関係にあります。
「金利のある世界」で、家計はどう備える?
低金利・デフレを前提にした資産設計や保険の入り方は、金利上昇局面では見直しが必要になります。優先順位の高いものから整理します。
① まずは資産を「色分け」する
金利がどちらに動いても振り回されないための一番の土台は、自分の資産を目的別に分けることです。
- 短期:日常で使うお金 → 現金・普通預金;
- 中期:2〜5年以内に使うお金 → 定期預金・個人向け国債など;
- 長期:5〜10年以上使う予定のないお金 → NISAを使った投資信託など。
現金・預金だけに偏らせると、金利が上がってきたとはいえ物価上昇には届かず、お金の実質的な価値がじわじわ目減りしてしまいます。
② 住宅ローンの「金利タイプ」を再点検する
いま変動で借りているなら、将来金利が上がった場合に家計が耐えられるかをシミュレーションしておきましょう。これから借りる人は、固定・変動それぞれのメリットとリスクを、金利上昇局面であることを前提に比べることが大切です。
③ 低金利時代に入った「固定利率」の商品を点検する
低金利のときに契約した固定金利型の貯蓄性保険や積立商品は、金利・インフレが上がる局面では実質的に価値が目減りする可能性があります。政府が推進する「資産運用立国(NISAなど)」の制度も活用し、インフレに強い資産へ配分を組み替える視点が有効です。
④ 固定費(保険料)を最適化し、浮いた分を回す
社会保険料や医療費の自己負担が増える方向だからこそ、まずは高額療養費制度や傷病手当金など公的保障でいくらカバーされるのかを把握し、そのうえで足りない部分だけを民間保険で補うのが基本です。重複した保障を削って浮いた固定費を、金利・インフレに強い資産へ回していきましょう。
判断に迷うときは、一人で抱え込まず、ファイナンシャルプランナー(FP)に相談するのも一つの方法です。
金利の変動に振り回されず、自分に合った資産形成と保険の入り方を整理したい方は、マネーキャリアの無料相談を活用してみてはいかがでしょうか。
まとめ
- 骨太の方針2026を閣議決定:2026年7月21日、高市政権初の「骨太の方針」を閣議決定。PB黒字化目標を見送り、「責任ある積極財政」へ舵を切った;
- 積極財政→国債売り→金利上昇:積極財政は「財政規律の緩み」と市場に受け止められやすく、国債売り→長期金利(国債金利)の上昇につながりやすい。先日の約30年ぶりの金利上昇も、この流れの一環;
- 家計への影響は両面:国の利払い費増→社会保障の自己負担増、住宅ローン金利の上昇、円安・インフレという形で家計に波及する一方、預金・個人向け国債の受取利息は増えやすい;
- 備えの基本4ステップ:資産の「色分け」→住宅ローンの金利タイプ点検→固定利率商品の見直し→固定費(保険料)の最適化。迷ったらFPへ。
骨太の方針は「今日決まって明日変わる」ものではありません。ただ、その方向性は国債金利という「市場の評価」を通じて、住宅ローンや預金、保険にじわじわ効いてきます。大きな流れを押さえておくことが、これからの家計防衛の第一歩になります。
出典
- 内閣府「経済財政運営と改革の基本方針2026」(令和8年7月21日閣議決定・本文)PDF
- 内閣府「経済財政運営と改革の基本方針2026 政策ファイル」(令和8年7月21日閣議決定・図表)PDF
- 日本経済新聞「政府が骨太方針を決定 成長分野に投資枠、財政はPB黒字化掲げず」(2026年7月21日)
- 毎日新聞「骨太の方針を閣議決定 高市政権初、経済成長重視も実効性不透明」(2026年7月21日)
- 第一生命経済研究所「骨太方針2026のポイント(社会保障編)」
- 財務省「個人向け国債」発行条件(令和8年7月募集分)
本記事は2026年7月21日時点の閣議決定内容および報道をもとに作成しています。消費減税の具体案(8月上旬めど)や高齢者の窓口負担見直しなど、詳細が今後決まる項目が含まれます。金利・相場は変動するため、最新情報は各報道機関・財務省の公式サイトでご確認ください。
