何が起きたか|地銀5行が相次いで損失公表
クレジットカードの決済代行サービスを手がける全東信(大阪市)が、7月6日付で大阪地裁から破産手続き開始決定を受けました。負債総額は1,259億円で、今年最大級の倒産です。
この全東信は、事業を続けるために複数の地方銀行からお金を借りていました。破産したことで、貸したお金が返ってこなくなる(貸し倒れ)恐れが生じ、7月7日、融資していた銀行が次々とこれを公表しました。全東信は、加盟店(お店)がクレジットカードで受け取った売上を、銀行より先に立て替えて支払う「決済代行」というビジネスをしていました。飲食店など多くの中小事業者がこのサービスを利用していたため、破産の影響は取引先の事業者にも及んでいます。
全東信への融資に伴う各行の引当処理状況
| 銀行 | 融資額 | 引当処理額(返ってこない可能性がある金額) |
|---|---|---|
| 東和銀行(群馬) | 80億円 | 約59億円 |
| 三十三フィナンシャルグループ(三重) | 50億円 | 約27億円 |
| 大光銀行(新潟) | 15億円 | 15億円 |
| 高知銀行 | 12億円 | 約9.15億円 |
| 島根銀行 | 8億円 | 8億円 |
※出典:Bloomberg「東和銀や三十三FGなど5地銀で損失、クレカ決済代行の全東信破産で」(2026年7月7日)
高知銀行は、この5行の1つとして名前が挙がった形です。
SNSでも大きな話題に|懸念・解説・批判の声
このニュースを受けて、X(旧Twitter)でもさまざまな立場からの投稿が広がっています。いくつか見てみましょう。
地銀ホルダーとしては影響がどこまで拡がるか心配です🫣
全東信破産の影響、地銀に波及 融資焦げ付きの恐れ相次ぐ
は??破産手続開始してるなら債権の50%は引当処理出来るし、決定してるなら回収不能額全額が貸倒損失になるぞ?全東信は開始決定してるから引当可能
島根銀行の8億円全額無担保融資はさすがにチェック体制を疑うレベル。高知銀行の9億円無担保もそうだけど、地銀が焦って利回りを求めた結果の自爆にしか見えない。
破産した全東信、どうやら粉飾決算も行っており、しかも20年前から・・・。幹部が「他人名義の加盟店契約」を行うなど...完全に真っ黒な会社やな
与信管理の甘さを指摘する声もありますが、実はこの最後の投稿にある「粉飾決算」、単なる噂ではなく後日、公的な調査機関によって裏付けが取れています。次の章で詳しく見ていきましょう。
全東信、実は20年前から粉飾決算していたことが判明
7月8日、東京商工リサーチが衝撃的な調査結果を発表しました。全東信は、業績悪化を隠すために、少なくとも20年前から粉飾決算を続けていたというのです。
粉飾の内容は、預金残高の水増し(約170億円)、架空債権(約154億円)、実質的に無価値な営業権の過大計上(約88.2億円)など。加盟店に対する未払立替精算金(約217億円)も帳簿に計上されていませんでした。
帳簿上の純資産は約24.8億円のプラスでしたが、こうした粉飾を是正すると、実質的には約605億円の債務超過だったとみられています。
これは、「なぜ銀行はもっと早く気づけなかったのか」という疑問への一つの答えになります。会社側が組織的・継続的に財務状況を偽っていた以上、通常の審査プロセスでは見抜くことが難しかった可能性があります。
そもそも何が起きているのか
銀行が貸したお金について、「返ってこないかもしれない」と判断した場合に、あらかじめ損失として会計上計上しておく処理のことです。実際に貸し倒れが確定していなくても、リスクに備えて先に費用計上しておく、いわば銀行の"備え"の仕組みです。
銀行は、預金者から集めたお金を企業などに貸し出し、その利息で利益を得ています。全東信のような企業も、銀行にとっては貸出先の一つでした。その貸出先が破産してしまった以上、貸したお金が回収できなくなる可能性が高まり、各行はそれぞれの融資額に応じて引当処理を行った、というのが今回の一連の流れです。
何が懸念されている?
ここで大切なのは、今回懸念されているのは「銀行の今期の利益が減ること」であって、「預金が引き出せなくなること」ではない、という点です。
引当額が大きいほど、その銀行の決算上の利益は圧迫されます。実際、東和銀行は公表当日に株価が前日比8.5%下落しました。市場では「他の地銀にも同様の焦げ付きが波及するのでは」という警戒感も出ています。特に東和銀行の引当額80億円は、同行の連結純資産の8.83%を占める規模であり、他行と比べても影響が大きいことが株価下落の背景にあると考えられます。
つまり今回のニュースの中心にあるのは、株主・投資家にとっての懸念であり、預金者にとっての懸念とは性質が異なるということを、まず押さえておくとよいと思います。
預金は大丈夫?高知銀行に口座がある人が気にすべきこと
検索データを見ても、興味深い傾向が出ています。「高知銀行 ATM」「高知銀行 インターネットバンキング」といった、今すぐお金を引き出したいという検索は、このニュースが出た後もむしろ減少しています。取り付け騒ぎのような動きは、少なくとも検索の面では見られません。
今回の引当額(高知銀行の場合は9.15億円)は、銀行の経営体力全体からすれば一時的な損失であり、銀行が破綻する、預金が引き出せなくなる、というレベルの話ではありません。規模感の目安として、高知銀行の直近決算(2026年3月期)の経常利益は13.8億円でした。今回の引当額はこの経常利益の6割強に相当する規模ですが、あくまで一時的な費用であり、翌期以降まで尾を引くものではありません。
万が一、銀行そのものが経営破綻した場合でも、1つの金融機関につき元本1,000万円とその利息までは、預金保険制度により法律で保護されます。多くの預金を1つの銀行に集中させている方は、この制度を知っておくだけでも安心材料になります。
銀行を選ぶときに見ておきたい視点
今回のようなニュースをきっかけに、自分が使っている銀行の特徴を改めて見直してみるのもよい機会です。店舗を持つ銀行とネット銀行では、手数料や金利だけでなく、相談のしやすさなど特徴が異なります。
今回の教訓|資産は「集中させない」が基本
今回の一件は、「取引先が1社破綻すると、そこにお金を貸していた側にも影響が連鎖する」という、信用リスクの典型例です。これは銀行同士の話に限りません。個人の資産運用でも、同じ考え方が当てはまります。
こうした貸し倒れリスクは、どれだけ審査をしっかり行っていても、完全にゼロにすることはできません。銀行が特定の1社に融資が偏らないよう分散させるのを基本にしているのと同じように、これは個人のお金の管理にもそのまま当てはまる考え方です。
1つの銀行・1つの金融商品にすべてを預けてしまうと、そこで何かトラブルが起きたときの影響を丸ごと受けてしまいます。預け先を複数に分けておくことが、こうした個別企業のトラブルに振り回されないための、基本的な備えになります。
自分の預け先やお金の色分けが今のままでよいのか迷う方は、一人で抱え込まず、ファイナンシャルプランナー(FP)に相談するのも一つの方法です。マネーキャリアでは無料でFPに相談できるので、気になる方は検討してみてください。
円安・為替介入のニュースに振り回されず、自分に合った資産形成の一歩を踏み出したい方は、マネーキャリアの無料相談を活用してみてはいかがでしょうか。
出典
- 日本経済新聞「高知銀行、全東信向け債権で取り立て不能・遅延の恐れ」(2026年7月7日)記事
- 日本経済新聞「全東信破産の影響、地銀に波及」(2026年7月7日)記事
- 時事通信「全東信破産の影響、地銀に波及 融資焦げ付きの恐れ相次ぐ」(2026年7月7日)記事
- Bloomberg(Yahoo!ニュース配信)「東和銀や三十三FGなど5地銀で損失、クレカ決済代行の全東信破産で」(2026年7月7日)記事
- 東京商工リサーチ「破産の全東信、20年前から粉飾決算か=600億円超の債務超過のおそれ」(2026年7月8日)記事
- Bloomberg「全東信、粉飾決算で600億円超の債務超過のおそれ」(2026年7月8日)記事
本記事の情報は2026年7月8日時点のものです。状況は変化する可能性があるため、最新情報は各報道機関の公式サイトでご確認ください。
