ドル建て終身保険とは?やめておくべき?メリット・デメリット徹底解説
円の低金利環境が続き、円安も進行する中、ドル建て終身保険への関心が高まっています。しかし「ドル建て終身保険って難しそう」「勧められているけどやめておくべき?」「ネットでの悪い評判が気になる…」とお悩みではないでしょうか?そのような方に向けて、この記事ではドル建て保険の特徴やメリット・デメリットなどを詳しく解説します。ぜひこの記事を最後まで読んで参考にしてください。
ドル建て終身保険とは?
商品のしくみ
ドル建て終身保険とは、保険料の支払い・保険金や解約返戻金の受け取りを、ドル建て(外貨)で行う終身保険です。
商品の特徴
ドル建て終身保険の特徴を、3つ解説します。
通貨がドル建て
契約者が保険料を支払い、死亡や高度障害状態で保険金を受け取るというしくみは、円建て終身保険と同じですが、保険料の支払いや保険金や解約返戻金の受け取りが、外貨の「ドル」になることが、大きな特徴のひとつです。
取り扱いの通貨は、米ドル・豪ドル、NZドルなど、保険会社によって異なります。
為替レートの影響を受ける(為替変動リスク・価格変動リスク)
ドル建て終身保険は、契約時(保険料の支払い)・解約時(解約返戻金)・保険金受取時などに、為替相場変動の影響を受けて価格が動く商品です。
日本円で保険料を支払うのではなく、日本円を一度ドルにして、保険料の支払いをします。そして、受け取る保険金についてもドルで返ってきますので、ドルを日本円に変換する必要があります。つまり契約時や解約時に、1ドルに対して日本円がいくらの価値があるのかを知っておくことは、資産価値を確認するひとつの目安になります。
諸費用がかかる
以下の表は、ドル建て終身保険にかかる費用の一覧です。通貨間の両替が発生する商品であるため、円建て終身保険よりも差し引かれる費用の種類が多いことを理解しておく必要があります。
保険関係費 | 保険契約の締結・維持・管理などにかかる費用 |
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解約控除 | 契約日から一定期間内に保険を解約した場合にかかる費用 |
通貨の 交換手数料 | 異なる通貨を交換する際にかかる手数料 ・契約時:保険料を支払う時(円→ドル) ・解約時:解約返戻金を円で受け取りたい時(ドル→円) ・満期時:保険金を円で受け取りたい時(ドル→円) |
※費用の名称や算出方法等は、保険会社・保険商品によって異なります
ドル建て終身保険の評判は?
円の低金利環境や昨今の円安進行を理由に、銀行・保険会社・保険ショップなどで、ドル建て終身保険をはじめとした外貨建て保険を勧められた方も多いでしょう。
しかし、インターネットで関連記事を検索すると、以下のようなネガティブな口コミが出てきます。
外貨建て保険に対するネガティブな口コミ |
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ドル建て終身保険はやめた方が良い 保険と投資は分けるべきだ 変動が激しいから損をする |
なぜ、ネガティブな口コミが目立つのでしょうか?以下の表は、近年の外貨建て保険の苦情件数の推移を表したものです。
■外貨建て保険・年金の新契約に関する苦情件数
出典元:一般社団法人生命保険協会 | 外貨建て保険・年金に係る苦情受付件数について
苦情の内容 | ・価格変動があるとは知らなかった。元本保証があると思っていた ・費用の負担があることを理解していなかった ・そもそも生命保険であることを知らなかった。定期預金だと思っていた |
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苦情の原因 | ・販売する側の商品説明不足 ・契約する側の商品理解不足 |
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一方で、昨今の円安進行やドル高金利の恩恵を受ける事ができた人達からは、ドル建て保険に対してポジティブな口コミもあります。
外貨建て保険に対するポジティブな口コミ |
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運用後数年でプラス40万円の解約返戻金が受け取れた 金利の低い学資保険ではなく、ドル建て保険がおすすめ 為替レートを考えて円安時に満期保険金を受け取って儲かった |
どちらの口コミが正しいということはありません。人それぞれ、属性・収入や金融資産・金融知識が異なる上に、契約した保険商品・契約金額・契約や解約のタイミングなど、すべてが異なるため、単純に比較や評価をすることはむずかしいからです。
ドル建て終身保険のメリット・デメリット
ここでは、一般的なドル建て終身保険のメリット・デメリットについて解説します。
どの金融商品にもメリットとデメリットは必ずあり、人によってその解釈は異なります。ご自身にとって最良の選択をするためのヒントにしてください。
メリット
円建て終身保険より利回りが高い
ドル建て終身保険は、円建ての保険商品に比べて金利が高い米国債で運用できます。
保険会社は将来の保険金の支払いに備えて、契約者から預かった保険料を積み立てて運用しています。日本は日本国債の利率が低く推移しているため、円建ての保険商品は運用益も低いですが、ドル建て保険なら、日本国債よりも利率の高い米国債で運用するので、運用益が期待できるのです。
通貨分散・資産分散ができる
円資産だけではなくドル資産を持つことによって、保有する通貨や資産をひとつに偏らせないでバランスを安定させることができます。
昨今の円安・インフレ進行によって、お金を円だけに預けている人は「持っている金額(数字)に変わりはないが、同じ金額でも買えるものが減ってしまった」と実感する場面が多いのではないでしょうか。これが円の価値の目減りといわれるものです。
保有する通貨を複数持つことは、ひとつの通貨の価値が下がった時のインパクトを和らげる助けになるのです。
円換算時の「解約返戻金」の増加が期待できる
ドル建て終身保険は為替相場の動向を確認しながら、契約時よりも円安になったタイミングで解約を決めて、解約返戻金を受け取れます。円安のときに解約すれば解約返戻金が多くなるのが特徴です。
■解約返戻金を受け取る時の円高・円安のしくみ
50,000ドルの解約返戻金を受け取る場合
・1ドル=100円で解約をすると→5,000,000円
・1ドル=120円で解約をすると→7,500,000円
※解約時にかかる諸費用は考慮していません
解約返戻金を受け取るタイミングは、契約当時の為替相場よりも円安になっている時がおすすめですが、注意点があります。
解約返戻金の受け取りを検討する際の注意
保険会社で解約シミュレーションを取ってもらい、その時点で円で受け取れる金額を確認しましょう。ドル建て終身保険の解約は、諸費用がかかって解約返戻金額が大幅に減る可能性があるからです。ドルで受け取る事も可能ですが、円での受け取りを希望する場合は、通貨の交換手数料もかかります。契約時より円安になっているからと単純計算をして解約を決めないようにしましょう。
デメリット
元本の保証がない
為替変動リスク・価格変動リスクを伴うドル建て終身保険は、為替レートが大きく関係し、元本が割れる可能性があります。この先日本が円高になった場合には、元本保障がないので解約返戻金が少なくなることも考えられます。昨今は円安が続いており金利の高いドル建て終身保険は魅力ですが、解約時にも円安という保証はありません。
商品のしくみが複雑
ドル建て終身保険は、終身保険の機能に加えて、外貨で運用しているためその分コストの種類も多く、商品のしくみが複雑でわかりにくいことがデメリットと言えます。保険機能の維持・管理にかかる費用、通貨を交換するための手数料、早期解約した場合の解約控除、市場金利の変動にあわせて解約返戻金が増減するという市場価格調整という機能まであるのです。
ドル建て終身保険の加入を検討する際の注意点とポイント
最後に、いままで解説してきたドル建て終身保険の特徴や一般的なデメリットを踏まえ、加入を検討する前に注意すべきこと、選ぶ際のポイントについて解説します。
■ドル建て終身保険の加入を検討する際の注意点
大事なポイント
万一の時に慌てて解約する必要のない、長期で置いておける余裕資金で検討しましょう
元本保証ではないことを理解する
ドル建て終身保険は、保険金や解約返戻金が、ドル建てベースでは元本保証されています。しかし、円換算した場合の受け取り金額は確定していません。日々の為替相場の変動によって金額が変わります。万が一「円高ドル安」になった場合は、元本割れする可能性があることを十分理解しなければなりません。
諸費用について理解する
ドル建て終身保険は、円建て終身保険にはない通貨の交換手数料など諸費用が発生します。そもそも、負担する諸費用にどのような種類のものがあるのか、また円建て終身保険よりも差し引かれる費用の種類が多いことを理解しておく必要があります。
円換算時のタイミングに気を付ける
■満期保険金を受け取るとき
保険の満期を迎えた時、契約時より円高であれば保険金は支払い総額を下回る可能性があります。その場合は、保険金を据え置くことが可能か問い合わせたり、保険金をドルのまま受け取ってご自身のドル預金口座に保有しておき、円安になるタイミングを待つという方法も可能です。
■解約返戻金を受け取るとき
満期前の解約を希望する場合、為替相場の変動だけではなく、解約控除や市場価格調整で解約返戻金が支払い総額を下回る可能性があるので、注意しましょう。契約時より円安になっているからといって、単純計算をして解約を決めないようにしましょう。
積立利率と金利の違いを理解する
ドル建て終身保険を検討するときは、各保険会社の「積立利率」をチェックすると思います。積立利率が高いほど、満期時や解約時に受け取れる金額が多くなる可能性が高くなります。しかし、気を付けたいのは、金利に関する似たような言葉があふれているので、違いを理解することです。
積立利率 | 保険会社が「必要な経費(人件費やオフィス管理費など)」や「万一に備えて準備するお金」をのぞいた、一部のお金を運用する利率 |
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金利 | 金融機関に預けたお金の全部を運用する利率 |
この言葉を誤って理解してしまうと、本来このくらいお金が増えると思っていたのに全然増えていないということにもなりかねません。実際に増える金額なのか、それとも表面的なものなのかということを理解しておきましょう。
通貨の種類を選ぶ
ドル建て終身保険といっても米ドル・豪ドル・NZドルなどがあります。保険会社がどのドルを取り扱っているのかを必ず確認しましょう。おすすめなのは世界基準通貨となっており、高い信用性と利便性がある米ドルです。
ちなみに2023年10月の為替レートを調べると下記のような結果になりました。
- 米ドル=149.76円
- 豪ドル=95.46円
- NZドル=88.28円
米ドルが群を抜いて高いのがわかりますね。
補償内容を検討する
そもそもドル建て終身保険は保険ですから、保障内容の確認も重要です。例えば、すでに円建て保険で手厚い保障のある保険を保有している方や、資産運用を目的にドル建て保険に加入したい方は、介護保障や三大疾病の保障を付加する必要はないでしょう。加入済みの保険の保障内容をもう一度確認してから、保障内容を決めることをおすすめします。
【まとめ】おすすめできる人・おすすめできない人
以上をふまえて、最後にドル建て終身保険をおすすめできる人・できない人について整理をします。
おすすめできる人
- 資産運用のひとつの手段として保険を活用したい方
- 円資産だけに偏るリスクを感じている方、分散投資の必要性を感じている方
- 長期投資が可能な余裕資金がある方
おすすめできない人
- 元本保証がある商品を希望する方
- 絶対にリスクは避けたいという方
- 商品のしくみを理解できない方
おすすめできる人
一定のリスクはあるものの、円よりも高い金利で資産を運用できます。支払い総額よりも大きな解約返戻金を受け取れる可能性が高いので「保障をもちたい」という方よりも「投資として保険を活用したい」という方に向いています。また、資産を分散させておきたい方にもおすすめです。
円安が進行している今だからこそ、外貨建て商品への関心は高まるものですが、今後の為替相場・米金利の動向についてはわかりません。投資の大原則として「万一の時に慌てて解約する必要のない、長期で置いておける余裕資金」での加入を検討しましょう。
おすすめできない人
元本割れのリスクが許容できない場合は、外貨建て終身保険の加入は一旦見送る方が良いでしょう。金利が高いドル建て終身保険は非常に魅力的ですが、確実に保険金や解約返戻金を多く受け取れる保障はどこにもないためです。また、ドル建て終身保険は円建て保険に比べて手続きが多くなります。両替やその他の手続きが面倒な方もドル建て終身保険は向いていないといえるでしょう。
保険商品そのものに良い悪いがあるわけではありません。人それぞれ異なる属性・収入や金融資産・金融知識・目的や求める成果に矛盾さえしていなければ、ドル建て終身保険も検討余地があります。そのために、ご自身の目的を明確にして、商品のしくみをきちんと理解した上で加入を検討しましょう。