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高額医療費は申請しなくても戻ってくる?高額療養費制度の自己負担額シミュレーター

間瀬 明子 間瀬 明子 更新日:
病院会計は3割負担ですが、それでも医療費が高額になった時に力を発揮するのが高額療養費制度です。まずはシミュレーターで、あなたの自己負担額がいくらになるか試算してみてください。1か月の上限額はいくら?どうやって計算するの?使えないパターンもあるの?2026年8月の改定内容とあわせて解説します。

高額療養費シミュレーター

窓口で払った1か月分の金額(3割負担額)と年収区分を入れると、高額療養費制度を使ったあとの自己負担額がわかります。 4か月目以降の「多数回該当」と、2026年8月に新設された年間上限額も反映しています。 制度の仕組み・年収別の早見表・申請方法は、シミュレーターのあとで順に解説します。

年収区分(69歳以下) 会社員の方は標準報酬月額、自営業の方は住民税の課税所得で決まります。分からない場合は年収の目安で選んでください。

1か月の窓口負担額(3割負担) 病院や薬局の窓口で実際に払った1か月分の合計です。ここから総医療費を逆算します。

治療が続く月数 同じ治療が何か月続くかを入れてください。4か月目から「多数回該当」で上限額が下がります。

窓口負担が自己負担限度額に届かないため、この条件では高額療養費は支給されません。払った額がそのまま負担額になります。

年間上限額に達しました。上限がなければ ですが、超えた分は健康保険から還付されます。

1か月あたりの自己負担額:

4か月目以降(多数回該当):

窓口負担 から逆算した総医療費:/月

窓口で払った1か月分の金額を入力すると、自己負担額を計算します。

2026年7月以前(改定前)との比較

同じ条件を改定前の上限額で計算すると でした。

69歳以下・1つの医療機関に毎月同じ額を支払った場合の概算です。実際には医科と歯科、入院と通院をそれぞれ分けて21,000円以上でないと合算できないなどの条件があります。 先進医療・自由診療・差額ベッド代・食事代は対象外です。正確な金額は加入している健康保険にご確認ください。

医療費に使える公的保険制度

日本は国民皆保険の国です。 自営業であれば国民健康保険、企業勤めであれば健康組合保険、引退していれば後期高齢者医療保険と、 健康保険の種類は違いますが、何かしらの公的保険に入っています。

この記事は2026年8月時点の最新情報から基本的な内容をまとめてお伝えします。

混乱しやすい主な制度:高額療養費?医療費控除?

「高額療養費制度」や「医療費控除」は用語が難しい上に、どちらもなんとなく手術や治療にかかった費用に関係ある。 というような印象を受けます。しかしその差は言葉だけではわかりにくくネット上でも混乱している様子が見えてきます。

・高額医療費は請求できません。医療費控除と間違えておりました。大変失礼致しました。
・これらを混同した問い合わせが確定申告の窓口では増えてめちゃくちゃ。

まず、病院や薬局に支払うお金が高額になった場合に、私たちが一般的に使う制度にはどのようなものがあるか整理しましょう。

  1. 3割負担
  2. 高額療養費制度
  3. 医療費控除

制度はもっと細かいものがあったり、年収や年齢によって負担する割合も変わります。こちらの記事では概要の理解を目的として一般的な制度を挙げて説明しています。

この3つの制度について特徴を表にまとめました。

 

病院・薬局などでかかる費用の3割の支払い。

各制度の特徴

メリット 名称 申請タイミング
申請可能期間
概要
お会計が減る 3割負担 お会計ごと  
高額療養費制度 1か月ごと
2年間申請可能
3割負担は上限まで
・3割の負担でも高額になる場合
・「自己負担の限度額」以上に支払ったお金は戻ってくる。
・もしくは請求されない
税金が減る 医療費控除 1年ごと
5年間申請可能
所得税・住民税を減らす。
・年間の医療費を所得から引く(控除)ことができる。
・その分所得が少なくなるので、その年の所得税・住民税が減額できる。
高額療養費制度は病院窓口のお会計金額が減る。
医療費控除は支払う税金が減る。

3割負担でも医療費が高額な場合は、1か月単位で「高額医療費制度」を利用します。 そしてその年の最後にかかった医療費の総額が一定額以上であれば、「医療費控除」を申告する流れになります。

医療控除についてはこちらの記事で説明しています。是非参考にしてください。 医療費控除いくら戻ってくる?

この記事では高額療養費制度について説明していきます。

高額療養費制度とは?

日本国民はみんな何かしらの健康保険に入っていて、病院窓口や薬局で支払うお金は3割ですみます。 業種によって健康保険の種類は様々ですが、全てのひとが受けられる制度です。

しかし、それでもの手術・長期の入院・薬による治療などで病院や薬局へ支払う金額が高額になってくると、生活を圧迫します。

高額療養費制度はそんな時に力を発揮します。この制度によって私たちは1か月当たりの医療費の自己負担金額に上限が決められているのです。 つまりその上限金額を超えて支払ったお金は戻ってくるのです

自己負担額をここまで払ってくださいという上限金額は、その人がいくら稼いでいるかで決められています。

表の前提
・「年収」「自己負担限度額」:厚生労働省高額療養費制度を利用される皆さまへを引用(2026年8月1日改定後の金額)
・「ざっくりいくらまで支払う必要があるか」:総医療費100万円~300万円で計算した金額を万円単位で四捨五入。

【69歳以下】高額療養費制度の自己負担額(2026年8月~)

年収 自分で払う上限金額
(自己負担限度額)
だいたいいくらまで
自分で払う必要があるか。
約1,160万円~
月収83万円以上
270,300円+(総医療費-901,000)✖1% 27万円~29万円
約770万~約1,160万円
月収53万円~79万円
179,100円+(総医療費-597,000)✖1% 18万円~20万円
約370万~約770万円
月収28万円~50万円
85,800円+(総医療費-286,000)✖1% 9万円~11万円
~約370万円
月収26万円以下
61,500円
住民税非課税
生活保護・所得135万円以下など
36,900円

2026年8月から上限額が引き上げられました

高額療養費制度は2026年(令和8年)8月診療分から自己負担限度額が引き上げられました。 物価と賃金の上昇に合わせた見直しで、69歳以下はすべての所得区分で上限額が約4%~7%上がっています。

ひと月の上限額はいくら上がった?

改定の前後を並べると次のようになります。すべての所得区分で上限額と、計算式のなかの基準額(総医療費から差し引く金額)が引き上げられました。

【69歳以下】自己負担限度額の改定前後

年収(標準報酬月額) 改定前
2026年7月診療分まで
改定後
2026年8月診療分から
約1,160万円~
83万円以上
252,600円+(総医療費-842,000)✖1% 270,300円+(総医療費-901,000)✖1%
約770万~約1,160万円
53万~79万円
167,400円+(総医療費-558,000)✖1% 179,100円+(総医療費-597,000)✖1%
約370万~約770万円
28万~50万円
80,100円+(総医療費-267,000)✖1% 85,800円+(総医療費-286,000)✖1%
~約370万円
26万円以下
57,600円 61,500円
住民税非課税 35,400円 36,900円
年収約370万~約770万円の層では、ひと月の上限額が80,100円から85,800円へ5,700円アップしました。
一方で、後述する「多数回該当」の金額は据え置きです。

入院が月をまたいだ場合、7月分は改定前、8月分は改定後の上限額が適用されます。 高額療養費は診療を受けた月から2年間さかのぼって申請できますので、2026年7月以前の医療費を今から請求する場合は改定前の金額で計算します。

新しく「年間上限額」ができました

2026年8月の見直しでは、ひと月の上限額とは別に1年間(8月1日~翌年7月31日)の自己負担の合計にも上限が設けられました。 長期治療で毎月のように高額療養費を使う人ほど効果が大きい仕組みです。

【69歳以下】年間上限額(2026年8月~)

年収(標準報酬月額) 年間上限額
8月1日~翌年7月31日
約1,160万円~(83万円以上) 168万円
約770万~約1,160万円(53万~79万円) 111万円
約370万~約770万円(28万~50万円) 53万円
~約370万円(26万円以下) 53万円
標準報酬月額15万円以下は41万円
住民税非課税 29万円

1年間の自己負担の合計が上限に達したあとは、それを超えて支払った分が加入している健康保険から還付されます。 手続きの方法は健康保険ごとに異なりますので、勤務先の健康保険組合・協会けんぽ・お住まいの市区町村にご確認ください。

この先の予定
所得区分をさらに細かく分ける第2段階の見直しが2027年(令和9年)8月に予定されています。 現在5つの区分が細分化され、年収約200万円未満の層は多数回該当の上限額が引き下げられる方向です。

高額療養費制度が必要になる時

高額療養費制度はどんな時につかえるのでしょうか。「医療費が高くなる」と言っても、その事情には違いがありますので、3つのパターンに分けて説明していきます。

医療費が高くなる可能性
  • 短期の高額治療:一発の高額手術など
  • 数名の高額治療:家族メンバーが同時期に病気にかってしまう
  • 長期の高額治療:半年以上の長期治療が必要になる
解説の前提
■2026年8月改定後の上限額を基にしています。
■年齢:69歳以下
■年収:約370万~約770万円
■制度が使えないケース:本記事の後半で解説

順を追って高額療養費制度の全体像が把握できるように説明していますので、是非全ての事例を読んでみてください。

短期の高額治療

短期の高額手術として、心筋梗塞など急を要する手術が挙げられます。

短期の治療たとえば・・・
心筋梗塞でバイパス術が必要になった
治療

冠動脈バイパス術

心臓の詰まった血管に新しい血管をつなぎ、血の流れをよくする手術です。

費用

約100万円3割負担

総医療費 330万円

冠動脈バイパスは3割負担でも約100万円ほどの出費が必要になる手術です。「高額療養費制度」を利用した場合、いくらの出費に抑えることができるのでしょうか。先ほどの高額療養費制度の表から、支払い上限がいくらになるか確認してみましょう。

計算式

85,800円+(総医療費-286,000)×1%

85,800円+(3,300,000-286,000)×1%

自己負担額 115,940円

3割負担で100万円の手術が 高額療養費制度を使用するとおよそ12万円に

数名の高額治療:家族の医療費は足し算できる(世帯合算)

扶養に入っているメンバーの治療費は高額療養費制度で足し算することができます。この足し算を世帯合算といいます。

数名の高額治療たとえば・・・
夫の帯状疱疹と、高校生の子供のアトピー治療が重なった

夫と子供が同時期に治療が必要になった場合について考えてみます。

夫:帯状疱疹

治療

点滴8日

症状がひどいため入院して点滴を行います。

費用

約10万円3割負担

総医療費 33万円

高校生の子供:アトピー治療

治療

治療薬を注射

デュピクセントというアトピーに対する治療薬を月に3本注射します。

費用

約7万円3割負担

総医療費 23万円

夫と子供:医療費を合算
家族で医療費がかさんでしまった場合は、その月の医療費として合算することが可能です。

計算式

85,800円+(総医療費-286,000)×1%

85,800円+{(330,000+230,000)-286,000}×1%

世帯合算後の自己負担額 88,540円

家族合わせて3割負担で17万円の治療が 高額療養費制度を使用するとおよそ9万円に

長期の高額治療:年に3回以上高額の場合はさらに負担額が減る(多数回該当)

高額の医療費を軽減してくれるのはありがたいのですが、それでも9万円前後です。長期や回数を重ねる治療は非常に苦しくなることに違いはありません。
そこで、高額療養費制度では何回も治療が必要。薬が必要な場合にはさらに自己負担を減らすことができます。

この仕組みを「多数回該当」といいます。
「多数回該当」は直近12ヵ月間に既に3回以上高額療養費が支給されている場合に使えます。そして4回目から支払金額の上限はさらに減ります。

一体いくらになるかというのが下記の表です。

【69歳以下】多数回該当の自己負担額

 
年収 自分で払う上限金額
(自己負担限度額)
多数該当が使える場合の
上限金額
約1,160万円~
月収83万円以上
270,300円+(総医療費-901,000)✖1% 140,100円
約770万~約1,160万円
月収53万円~79万円
179,100円+(総医療費-597,000)✖1% 93,000円
約370万~約770万円
月収28万円~50万円
85,800円+(総医療費-286,000)✖1% 44,400円
~約370万円
月収26万円以下
61,500円 44,400円
住民税非課税
生活保護・所得135万円以下など
36,900円 24,600円
2026年8月の改定では多数回該当の金額だけは据え置きとなりました。 そのため4回目以降は、改定前と同じ44,400円(年収約370万~約770万円の場合)で頭打ちになります。

厚生労働省:高額療養費制度を利用される皆さまへ

長期の高額治療たとえば・・・
がんによるオプジーボ投与
治療

治療薬オプジーボ

がん治療に使用されるオプジーボという薬は、皮膚がん、肺がん、胃がんなど幅広く使われます。

費用

半年約115万円3割負担

総医療費 約380万円

オプジーボは超高額な治療薬で、標準的な用法は1回240mgを2週間間隔(ひと月あたり2回)の点滴です。薬価は100mgあたり131,811円ですので、1回240mg分の薬剤費だけで約32万円、ひと月では約64万円になります。例えば6か月投与した場合、総医療費で半年合計約380万円となります。****

そこで高額療養費制度を使用します。毎月約9万円を6ヵ月繰り返しますので、半年で約54万円となります。
9万円が6か月も続くのは負担が大きいため、多数回該当によって支払う金額をさらに減らすことができます。高額療養費制度を年3回使用した時点で、4回目以降は多数回該当の金額が上限になりますので、この場合上限4万円台となります。

計算式

1. 1か月あたりの支払限度額

85,800円+(640,000-286,000)×1% = 89,340円

2. 年間3回使用したため、4回目以降の限度額

44,400円

3. 6ヵ月に支払う医療費の合計金額

89,340円×3回 + 44,400円×3回 = 401,220円

6ヵ月の自己負担合計 401,220円

治療が1年続く場合は「年間上限額」も効いてきます
同じ治療を12か月続けた場合、自己負担の合計は89,340円×3回+44,400円×9回=667,620円です。 しかし2026年8月に新設された年間上限額(年収約370万~約770万円なら53万円)を超えた分は還付されるため、 1年間(8月1日~翌年7月31日)の実質的な負担は53万円で頭打ちになります。
3割負担で半年約115万円の治療が 高額療養費制度の多数回該当を使用するとおよそ40万円に
さらに長期の高額治療たとえば・・・
・HIV・血友病・人工透析

治療に必要な時間が非常に長く、続けて治療を行うことが必要な病気には多数回該当の特例があります。

  • HIV・血友病:自己負担上限1万円
  • 人工透析:自己負担上限1万円または2万円(年収による)

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高額療養費制度の申請方法は?申請しなくても戻ってくる?

いざ治療費が高額になった、高額療養費制度はどのような方法で利用できるのでしょうか?

高額療養費制度を使う3つの方法

方法 会計前👉 👉窓口での会計👉 👉会計から3か月以降
事後申請 ・3割負担分の費用を支払う。
健康保険に申請
・高額療養費制度の自己負担上限額を超えた分のお金が戻ってくる。
事前申請
限度額適用認定証
健康保険に限度額適用認定証を発行してもらう 高額療養費制度の自己負担上限額までを支払う。
申請不要
マイナンバー健康保険証
高額療養費制度の自己負担上限額までを支払う。

それぞれの方法について、流れとデメリットを説明していきます。

事後申請

まずは窓口で3割負担分を支払います。その後自分の加入している健康組合へ高額療養費制度を利用したいと申請します。

申請の方法は健康保険ごとに差がありますが、必要な書類はシンプルです。
・申請書
・領収書(不要な場合もある)

申請から3か月以降、高額療養費制度の自己負担額を超えて支払っていたお金が指定口座に振り込まれます。

事後申請のデメリット
先に高額の支払いが発生するため、問題はお金が戻ってくるのかという不安と現金不足です。

  • 不安:本当に入金があるか。ドキドキする。3ヵ月以上待つのが怖い
  • 現金:高額の支払いがあったため、貯金が一気に減った。振り込まれるまで待つのが痛い。

事前申請:限度額適用認定証

手術や高額な薬の投与が決まっている場合など、健康保険へ問い合わせて支払の前に「限度額適用認定証」を発行してもらいます。

申請の方法は健康保険ごとに差がありますが、必要な書類はシンプルです。
・発行申請書

被保険者(健康保険に加入している人)や発送先の情報を記載します。
どんな手術に使うのか、といったようなことは聞かれません。ある日突然何があってもいいように、何もなくても「限度額適用認定証」を発行しておいて、保険証と一緒に持っておくという方法もあります。

病院窓口で、「限度額適用認定証」を提示すれば高額療養費制度がつかえます。会計の時点で自己負担上限額までの支払いですのでお金の戻りを待つ必要はありません。

事前申請のデメリット
申請は簡単ですが、面倒だと思う方もいるようです。

  • 申請することが面倒くさい

申請不要:マイナンバー健康保険証

2021年10月20日から、マイナンバーカードの健康保険証利用の本格運用がスタートしました。
マイナンバーカードを健康保険証として利用するための利用申し込みをすれば、マイナンバーカードが健康保険証になります。

その後、従来の健康保険証は2024年12月2日に新規発行が終了し、2025年12月1日ですべて有効期限を迎えました。 現在はマイナ保険証を使うか、マイナンバーカードを持っていない方には健康保険から交付される「資格確認書」を使うかのどちらかになっています。

マイナンバー保険証は、限度額認定証と健康保険証が一体になった保険証というイメージです。 事前申請をしなくても会計の時点で自己負担上限額までの支払いですのでお金の戻りを待つ必要はありません。

マイナンバー健康保険証の注意点
オンライン資格確認は2023年4月から原則としてすべての医療機関・薬局に義務づけられたため、対応施設が見つからないという心配はほぼなくなりました。 一方で、カードに搭載された電子証明書の有効期限(発行から5回目の誕生日)が切れるとマイナ保険証として使えなくなる点には注意が必要です。 更新はお住まいの市区町村の窓口で行えます。

  • 期限:電子証明書の有効期限が切れると使えない。更新を忘れずに。
  • 例外:マイナ保険証を持たない方は「資格確認書」で受診する。

高額療養費制度に該当しないパターン

ここまで説明してきた高額療養費制度ですが、何でもかんでも医療費として加算できるわけではなく、使うための条件があります。 ひきつづき69歳未満の場合を前提にして解説していきます。

対象の医療に条件あり

高額療養費制度の対象は公的医療保険が使える治療や薬です。保険の効かない治療には適用できません。

  • 先進医療には使えない。
  • 自由診療には使えない。

先進医療とは

厚生労働省が承認した先進性の高い医療技術のことを指します。
たとえば、がんの場合は陽子線治療(ようしせんちりょう)があります。 メスを使わずにがん細胞を死滅させる治療方法で、効果があるといわれています。

陽子線治療は年々保険適用の範囲が広がっており、小児腫瘍・骨軟部腫瘍・頭頸部悪性腫瘍・限局性の前立腺がん・肝細胞がん・肝内胆管がん・局所進行膵がん・早期肺がんなど、 現在は10前後の疾患が公的医療保険の対象です。保険が使えるがんであれば高額療養費制度も使えます。

一方、それ以外のがんで陽子線治療を受ける場合は先進医療の扱いとなり、技術料は全額自己負担です。 金額は医療機関によって異なりますが、筑波大学附属病院では3,266,000円(2025年11月1日改定)となっています。 なお診察・検査・投薬・入院料などの部分は保険が使えますので、その分だけは高額療養費制度の対象になります。

自由診療とは

予防接種、健康診断、美容整形など治療の目的が、ケガや病気を治すものでなかったり、 日本で認められていないが海外で行われている診療などです。費用は治療によって様々です。

医療費はどこで?いくら?いつ?:該当しないパターンに要注意

高額療養費制度を使う1か月単位の医療費について、前提条件をしっかりチェックしないと損する可能性があります。 保険適用の治療費なら1か月の治療費がすべて対象になるというわけではありません。

  • 1ヵ月とは月初1日から月末31日まで。月をまたいだ医療費の足し算はダメ
  • 3割負担で21,000円以上ないとダメ
  • 病院・入院・通院ごとに21,000円以上ないとダメ
  • 扶養メンバーでも、条件に当てはまらない費用の足し算はダメ

【69歳以下】高額療養費制度が利用できる医療費の考え方

いつ? 月初1日から月末31日まで
いくら? 治療を受けた人1人の3割負担が21,000円以上
21,000円以上の計算? A病院 入院 合計21,000円以上
A病院 通院 合計21,000円以上
B病院 入院 合計21,000円以上
B病院 通院 合計21,000円以上
・医科・歯科ごとに入院もしくは通院を分ける
・それぞれ合算して21000円以上の場合に高額療養費制度の対象になる。
だれ? 扶養メンバーで上記に当てはまる金額はすべて合算できる。

この条件によって損してしまうパターンについて、具体例を作成してみました。

ある家族の4月から5月の医療費記録

病院 期間 3割負担額 4月の高額療養費制度になる?
A病院入院(内科) 4月20日~4月30日 70,000円 21,000円以上
5月1日~5月15日 100,000円 21,000円以上だが、月をまたいでいるため
B病院通院(眼科) 4月1日 15,000円 同じ病院で4月の通院合計が21,000円以上
4月5日 10,000円
C病院通院(歯科) 4月10日 20,000円 21,000円未満

この家族が4月の高額療養費制度に合算できる金額は次の3件の医療費です。

  • A病院入院70,000円
  • B病院通院15,000円
  • B病院通院10,000円

1か月のタイミングで損

おなじA 病院で5月の請求が100,000円あります。しかし月をまたいでいるため4月に足すことができません。
つまり5月は別に高額療養費制度を利用して自己負担限度額の9万円前後まで支払となります。

もしも、月初めの4月から入院していれば、A病院入院が170,000円となったため5月に再度高額療養費制度の自己負担上限額を支払う必要はありませんでした。

病院違いで損

C病院通院(歯科)は21,000円を超えていないため合算できません。

もしここでC病院から薬が処方されていて、その金額が1500円だったとします。その場合はC病院の医療費が21,500円となりますので、C病院も高額療養費制度を使うことができます。

処方された薬代
ある病院から処方された薬代は、その病院の通院の費用として治療費に薬代を足すことができます。
厚生労働省保険局:高額療養費制度を利用される皆さまへ

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高額療養費制度のまとめ

いかがでしたでしょうか。ここまで年収500万円~700万円の層を基準に説明してきましたが、 69歳以下の所得区分は2015年(平成27年)1月に3区分から5区分へ細分化され、 それまで所得の高い人も一律上限8万円だったのが、所得が高い層では自己負担限度額が27万円台まで上がっています。
さらに2026年(令和8年)8月には全区分で上限額が引き上げられ、あわせて年間の上限額も新設されました。

そのため、この制度に対する不満の声も聞こえます。 企業の健康保険組合に加入されている方は、加入組合独自制度で支払い上限を低く設定している場合があります。さらに高所得者層は税率も高いですので、医療費控除を申請することをおすすめします。

高額療養費制度の大事なポイント
  • 「高額療養費制度」は医療費が減る。「医療費控除」は税金が減る。
  • 年収約370万~約770万円の医療費の上限額は約9万円~11万円(2026年8月改定後)。
  • 年3回以上使う場合は、さらに限度額が減る。
  • 1か月は月初1日から月末まで
  • 3割負担の費用が21,000円以上から利用できる
  • 病院(医科・歯科)・通院・入院それぞれに21,000円以上が必要
  • 薬代は処方せんを出した病院の通院に合算できる
  • 扶養メンバーは世帯合算できる
間瀬 明子

間瀬 明子 金融・保険ライター

日本保険仲立人協会の登録を受けた元保険ブローカーで、日商簿記2級保持者。総合商社の保険代理店営業として3年勤務。大型プロジェクトのリスクコンサルティングを請け負い、年間120契約以上の金融・保険商品を提案・仲介してきました。比較が難しい保険商品を様々な角度から分析してわかりやすく解説していきます。株式会社イードが運営するお金の専門メディア『マネー達人』に寄稿もしています。スマ子のアカウントでX運用中。

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