ミュゼプラチナム従業員が破産手続き申し立てへ-知っておきたい未払賃金立替払制度

脱毛サロン大手「ミュゼプラチナム」で、給与の未払いが相次ぎ、ついには従業員が会社に対して破産申し立てを行うという異例の事態が発生しています。この記事では給与未払いで役立つ国の支援制度「未払賃金立替払制度」について、制度の内容から利用条件、ミュゼプラチナムの従業員には適用されるのか詳しく解説します。
未払賃金立替払制度とは?
企業が倒産して従業員に賃金を支払えなくなった場合、国が一定額を立て替えて支払う制度です。なじみのない制度だと思いますので、制度の概要について厚生労働省独立行政法人 労働者健康安全機構(JOHAS)の案内に基づいて解説します。
未払賃金立替払制度
【運営】独立行政法人 労働者健康安全機構
【目的】生活資金を失った労働者を経済的に守ること
【制度案内】 未払い賃金の立替払制度のご案内
制度の対象になる会社とは?
以下すべてに当てはまる企業が対象です。
- 労災保険に加入している
- 1年以上の事業実績がある
- 法的に「倒産」している(例:破産手続き開始)または、実質的に倒産と認められた中小企業
中小企業とは、業種により次のいずれかに該当する企業です:
業種 | 資本金などの条件 | 従業員数 |
---|---|---|
一般産業 | 3億円以下 | 300人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
サービス業 | 5000万円以下 | 100人以下 |
小売業 | 5000万円以下 | 50人以下 |
制度の対象になる従業員は?
- 対象企業で働いていた
- 未払い賃金が存在する
- 退職が倒産日(または認定日)から「過去6か月〜2年以内」である
いくら支払われるの?
未払い賃金総額の8割までが補償されます。さらに年齢に応じて限度額があります。限度額を超えた場合は立替払い上限額の支払いになります。
年齢 | 限度額 | 立替払の上限 |
---|---|---|
30歳未満 | 110万円 | 88万円 |
30〜44歳 | 220万円 | 176万円 |
45歳以上 | 370万円 | 296万円 |
※ボーナス・交通費などは対象外になる場合があります。
申請方法は?
対象になることがわかった場合、個人で申請が必要です。待っていても制度の適用にはなりませんので、申請手順を確認してアクションをしましょう。
法的な倒産の場合
破産管財人などから証明書を受け取り、労働者健康安全機構に提出。
※倒産区分に応じて証明書の発行者が異なります。
倒産区分 | 証明者 |
---|---|
破産 | 破産管財人 |
特別清算 | 清算人 |
民事再生 | 再生債務者(管財人) |
会社更生 | 管財人 |
実質的な倒産の場合
労働基準監督署に「倒産」の認定申請 → 認定通知書を受け取り、労働者健康安全機構に提出。
申請期日
どちらの場合も、認定日の翌日から2年以内に申請が必要です。
出典:独立行政法人 労働者健康安全機構(JOHAS)未払賃金の立替払制度のご案内(R4.2)よりスマートマネーライフ編集
ミュゼプラチナムのケースと未払賃金立替払制度
ここまで未払賃金の立替払制度について確認したところで、今回のミュゼプラチナムのケースについて考えます。
何が起こったのか?
まずこれまでの報道を時系列で整理します。
- 2024年11月頃から給与遅配・未払いが発生
- 2025年3月、全店舗が一時休業
- 約2,500人の従業員に総額およそ15億円の未払いが発生
- 2025年4月、従業員が破産申し立て
昨年秋から未払いが発生し、約15億円の未払いとなっているようです。
ミュゼプラチナムが破産をした場合、返済の優先順位は「滞納税金等」→「給与・退職金等」→「一般債権」となります。
従業員としてはミュゼプラチナムに残された原資が借金や家賃返済などの一般債権に流れる前に、破産して未払の給与支払いを優先させたい意向があるといえます。
制度が適用される可能性は?
🤔ミュゼプラチナムは制度対象企業該当するのでしょうか。
ミュゼは2021年頃までは上場企業の傘下にあり、全国展開しています。さらに今回は従業員2,500名の賃金未払いの報道ですので、賃金未払立替制度要件を満たす可能性は高いといえます。
🤔従業員側はどうでしょうか。
制度の対象になる従業員は、倒産の認定申請日(事実上の倒産の場合)の6か月前の日から2年の間に当該企業を退職という要件があります。
現在、ミュゼプラチナムの運営会社であるMPH株式会社に対して破産手続き開始の申し立てが行われている状況です 。 法律上の倒産の場合、基準日は破産手続開始決定等の日となります。
もし従業員の退職日がこの基準日から6か月以上前である場合、制度の対象とならない可能性があります。 事実上の倒産の場合には、労働基準監督署長の認定申請日が基準となります。
すでに退職した従業員にとっては、自身の退職日と今後の倒産基準日が制度基準に合致するかがポイントになります。
まとめ:未払い賃金が発生したらすぐ行動を
ミュゼプラチナムのケースのように、企業の突然の経営悪化により賃金が支払われない事態は、他人事ではありません。
「未払賃金立替払制度」は、従業員にとっての最後のセーフティネットです。
申請には要件・期限など準備が重要ですが、未払い賃金に泣き寝入りしないためにも情報を正しく把握し、早めに対応することが重要になります。
参考ニュース
- NHKニュース│ ミュゼプラチナムの元従業員ら 破産手続き開始を申し立て