「主婦年金」縮小へ―第3号被保険者制度はどう変わるの?
2026年4月13日、自民党と日本維新の会が「第3号被保険者制度を縮小する」という方針で合意しました。この制度は、会社員や公務員の配偶者が自分では保険料を払わずに年金をもらえる仕組みで、現在約641万人が対象です。「106万円の壁」がなくなる流れとも重なり、いわゆる「主婦年金」をめぐる制度が大きく変わろうとしています。何がどう変わるのか、家計にどんな影響があるのかをわかりやすくまとめました。
第3号被保険者制度とは
簡単にいうと、「夫(または妻)が会社員・公務員であれば、専業主婦(主夫)は年金保険料を一切払わなくても、将来、国民年金がもらえる」という制度です。対象になるのは、配偶者の年収が130万円未満で、自身が20歳以上60歳未満の人です。
この制度が始まったのは1986年。当時は専業主婦の家庭が多く、夫の厚生年金の保険料の中でまとめて費用を賄う考え方に理があったといえます。しかし今は共働き世帯が専業主婦世帯をはるかに上回っています。「自分でちゃんと保険料を払っているのに、払わなくていい人がいるのはおかしい」という声が年々大きくなっていました。
いまの第3号被保険者は何人いる?
厚生労働省によると、 2024年度末の第3号被保険者数は641万人で、前の年より45万人減っています。社会保険の加入対象が広がったことで、すでに制度の対象者は減り続けています。今回の政治合意でさらに「縮小の流れ」が加速しそうです。
出典:厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」
2026年4月「自民・維新合意」の内容
2026年4月13日、自民党と日本維新の会が実務者レベルで話し合い、「第3号被保険者制度の対象を縮小していく」方向で合意しました。維新はもともと「廃止すべき」と主張していましたが、今回は自民党との折り合いとして「段階的な縮小」という表現に落ち着いています。
自民党の田村憲久元厚生労働相は会見で「縮小には国民的な議論も必要だ」と述べました。維新の梅村聡税調会長も「方向性をしっかり定めて両党で進んでいくことで合意できた」とコメントしています。
出典:日本経済新聞「自民・田村憲久氏、年金3号の対象縮小へ『国民的議論を』 維新と協議」(2026年4月13日)
「廃止」と「縮小」はどう違う?
今回の合意は 「廃止」ではなく「縮小」です。制度が明日なくなるわけではありません。具体的なスケジュールや内容は2026年度中に決まる予定で、いまはまだ詳細が示されていない段階です。ただし、連立合意文書には「2026年度中に具体的な制度設計を行う」と明記されており、議論が急速に進む見通しです。
出典:自民・維新 連立政権合意書(京都府理学療法士連盟による全文掲載)
2025年年金制度改正の主なポイント
2025年6月13日に「年金制度改正法」が成立しました。第3号縮小の土台ともなる重要な改正で、多くの変更が2026年4月以降に順次始まります。
出典:厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」
| 改革項目 | 変更内容 | 施行時期 |
|---|---|---|
| 106万円の壁の撤廃 | 「月収8.8万円以上」という加入条件をなくし、週20時間以上働けば社会保険に加入する仕組みに一本化 | 2025年6月公布から3年以内 |
| 企業規模要件の段階的撤廃 | 従業員数に関係なく、週20時間以上の勤務で社会保険への加入が義務に | 2027年10月より段階的 |
| 在職老齢年金の緩和 | 働きながら年金が減らされない上限額を、月50万円から62万円に引き上げ | 2026年4月1日 |
| 遺族厚生年金の有期化 | 子どものいない60歳未満の配偶者への給付を、終身から原則5年間に変更(男女とも) | 2028年4月1日(女性は20年かけて段階移行) |
出典:厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」 / 契約ウォッチ「年金制度改正法とは?変更のポイントを分かりやすく解説」
「106万円の壁」の撤廃―20時間ルールへの一本化
これまでパートで働く人が社会保険に入るには「月収8.8万円(年収約106万円)以上」という条件がありました。この条件がなくなり、「週20時間以上働く」かどうかだけで判断される仕組みに変わります。つまり、年収に関係なく、週20時間以上働けば社会保険に加入することになります。厚生労働省は、106万円の壁を気にして働く時間を抑えている人が約65万人いると推計しており、制度改正によって「働き控え」が減ることが期待されています。
出典:エデンレッドジャパン「【社労士監修】106万円の壁はどうなった?法改正で撤廃決定」 / 厚生労働省「年収の壁への対応」

「106万円の壁」はいつなくなる?
法律の公布から3年以内が目安ですが、全国の最低賃金が1,016円以上になるタイミングを見て決まります。すでに多くの地域で最低賃金が950円を超えており、想定より早く撤廃される可能性もあります。
出典:厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」
遺族厚生年金の有期化
2028年4月以降、配偶者を亡くしたとき、「18歳以下の子どもがいない」かつ「60歳未満」の場合に受け取れる遺族厚生年金が、これまでの「一生涯もらえる」から「原則5年間だけ」に変わります。老後の生活設計に大きく関わる変更です。なお女性については、急激な変化を避けるため20年かけて段階的に移行する措置が設けられます。
出典:Ponta「年金制度改正法成立で何が変わる?主な改正点をわかりやすく解説」
在職老齢年金の緩和
65歳以降も働きながら年金を受け取る場合、収入が一定額を超えると年金が減らされるルールがあります。その「減額が始まるボーダーライン」が、月50万円から月62万円へ引き上げられます(2026年4月1日より)。これにより、年金を減らされる心配なく働き続けられるシニア層が増え、人手不足の解消と高齢者の収入安定の両方が期待されています。
出典:TMI総合法律事務所「令和7年年金制度改正法の成立について」
賛否が分かれる理由
「縮小合意」のニュースが広まると、SNSやメディアで賛否が大きく割れました。お金の損得だけでなく、「家族のあり方」「公平感」への感情的な反応が入り混じっています。
- 物価高が続く中での家計への打撃が大きい
- 子育て中の専業主婦への負担が増すことで、少子化対策に逆行する
- 病気・介護・地方での就職難など、「週20時間以上働きたくても働けない」事情がある人への配慮が足りない
- 共働き世帯や独身者がきちんと保険料を払っている中、専業主婦だけ不公平
- 「自分名義の年金資産」を積み立てられるメリットがある
- 深刻な人手不足の緩和と女性の社会参加の促進につながる期待
維新の主張については:日本維新の会「社会保険料を下げる改革提言」も参照
今すぐ確認すべきこと
状況別チェックリスト
自分がどのケースに当てはまるか確認して、早めに備えましょう。
| あなたの状況 | 確認・検討すること |
|---|---|
| いま専業主婦・主夫で第3号被保険者 | 制度縮小の具体的なスケジュールを引き続きチェック。週20時間以上働くと保険料が発生しますが、将来もらえる年金は増えます。家計全体でプラスになるかシミュレーションを |
| 年収106万円前後で働く時間を調整している | 2026年10月をめどに賃金要件がなくなる予定。いまの勤務先で加入条件がどう変わるか、早めに確認を |
| 従業員50人以下の会社でパート勤務 | 2027年10月以降、会社の規模に関係なく加入対象になる可能性があります。手取りへの影響を事前に試算しておきましょう |
| 遺族年金を老後プランに組み込んでいる | 2028年4月以降は原則5年間に。今の生命保険の保障で足りるか見直しを |
参考リンク
本記事は公開情報をもとに作成しています。制度の詳細・最終的な内容は今後変更される可能性があります。個別の年金・保険料の試算については、年金事務所またはファイナンシャルプランナーへのご相談をお勧めします。
