新首相就任で「ガソリン税暫定税率」撤廃?1回の給油でどれくらい負担が減る?

自民党の高市早苗総裁の首相就任が期待されている中で、首相就任とリンクするように「ガソリン税の暫定税率の撤廃」についても取り沙汰されています。暫定税率にとはどのような仕組みになのか、これが撤廃されることでどのような影響があるのか、という点を解説します。

記事監修
宇野 源一
大学卒業後、大手メーカー系自動車ディーラーに就職。その後、金融業界の業務・教育支援を行う会社に転職し、法人営業に従事しながら、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP資格を取得。2018年よりライターとしても活動。FP視点でのカーライフを提案することが得意。
ガソリン税の暫定税率とは
私たちが購入しているガソリンにはガソリン税が課税されています。これはそもそもどのようなもので、どのような仕組みとなっているのかというところから確認していきます。
ガソリン税は「揮発油税」と「地方揮発油税」をあわせた総称で、1Lあたりあわせて53.8円が課されています(沖縄は軽減措置あり)。
ガソリン税は道路整備の財源を補うとの名目で徴収されており、このうち25.1円が暫定税率(当分の間税率)として本来の課税額に上乗せされています。
現在のガソリン価格の仕組み
私たち消費者が購入しているガソリンには、ガソリンそのものの価格に加え、石油石炭税とガソリン税、消費税の3つの税金が合計されています。
店頭では「レギュラーガソリン1リットルあたり165円」というように、すべてが合算されたコミコミ価格となっているため、内訳がよくわからなくなっているのが実情です。
さらに厄介なのが、いま販売されているガソリンには政府からのガソリン補助金※が入っているという点です。
※ガソリン補助金とは
ガソリン補助金は、コロナ禍における経済政策のひとつとして始まったもので、正式名称は「燃料油価格激変緩和補助金」です。この補助金はガソリンを購入する一般消費者に直接支給されるのではなく、石油元売会社に対して全国平均ガソリン価格が基準価格以上になった場合に一定額を支給する、というものとなっています。
ガソリン補助金は市況によって変動し、2025年10月17日現在は1リットルあたり10円が政府より支給されています。補助金自体は段階的に引き下げられており、近年では2022年4月には1リットルあたり41.4円が補助されていました。
この補助金はガソリンと軽油に対して支給されています。
暫定税率がなくなるとどれくらい負担が減る?
もし暫定税率が無くなったらどれくらい費用負担が減るのか、シミュレーションしてみましょう。
2025年10月16日に資源エネルギー庁が発表したレギュラーガソリンの全国平均価格は1リットルあたり175円です。一回の給油で30リットル給油した場合について計算します。
【現在・・・】
175円×30Lで5,250円。(ガソリン代の内訳は、105.2円+ガソリン税53.8円+消費税16円)
【暫定税率が無かったら・・・】
147円※×30Lで4,410円。(ガソリン代の内訳は、105.2円+ガソリン税53.8円-25.1円)×消費税
※1リットルあたり約28円安くなる。
30リットル給油すると1回辺り840円の節約、毎月1回給油する人なら年間約1万円も負担が減るのです。
暫定税率が撤廃されることで現在支給されている補助金がなくなる可能性もありますが、実質的な負担は減ると思われます。
暫定税率 | ガソリン価格 | 差額 | 給油1回あたり | 差額 |
---|---|---|---|---|
あり | 175円 | ー | 5,250円 | ー |
なし | 147円 | ▲28円 | 4,410円 | ▲840円 |
ガソリン税の暫定税率廃止は事あるごとに議論されていますが、なかなか撤廃されません。最近では2024年12月11日に行われた自民党・公明党・国民民主党による会談の中で「ガソリン税の暫定税率は廃止する」合意文書の中に明記されました。
しかし、いつまでに廃止すると明言されておりません。2024年12月に閣議決定された「令和7年(2025年)税制改正大綱」にはガソリン税についての記載がありませんでした。
※税制改正大綱とは
- 翌年以降の税制について網羅的にまとめたもので、基本的に翌年の国会で大綱通りに法案が出され、税制が決まっていく。
本日現在も暫定税率が無くなっていませんので、まだ廃止が決まっていないということになります。
新首相が誰になるかによってこの流れが変わるかも
昨年の3党合意はしたものの、それぞれが分裂状態にあるため暫定税率がどのように変わってくるのかが全く読めない状況です。
首相が誰になるのか、ということで暫定税率の行方も変わってきますので今後の動向に注目したいところです。
あくまでも予測ではありますが、誰が首相になったとしても「国民生活を守る」という使命を背負うはずですのでガソリン暫定税率についての議論が活発に進んでいくのではないかと思われます。
政治の空白期間が伸びてしまう前に大勢が決まることで、年末に発表される税制改正大綱に「暫定税率の撤廃」の文字が出てくるかもしれません。
「軽油引取税」も今後の争点に
暫定税率の問題と同様以上の問題となり得るのが軽油引取税です。ここまでお伝えしてきたガソリン税の暫定税率はあくまでも主に乗用車が使用するレギュラーガソリンやハイオクガソリンが対象となっており、トラックやバスなど大型車の燃料である軽油は今回の争点となっていないのです。
軽油引取税の暫定税率は、本則税率(1キロリットルあたり15,000円)に17,100円が上乗せされた、1キロリットルあたり32,100円。つまり1リットルあたり32.1円が課税され、そのうち17.1円が暫定税率となっています。物流を支えている業界にとっては軽油引取税の行方も気になるところですので、今後の動向に注目してきたいところです。