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年末調整で保険料控除をしないとどうなる?控除の種類と控除忘れのデメリット・対処法を解説
「年末調整で保険料控除の手続きをしないと税金はどうなる?」「どのように進めれば良いか分からない」 保険料控除とは、申告することで所得税や住民税が安くなる制度ですが、控除の恩恵を受けるには年末調整で「控除証明書」を提出して証明しなければいけません。
手続きの方法を知らなかったり多忙で忘れてしまったりすると、税金にどのような影響があるのでしょうか。
本記事では年末調整で保険料控除をしないことのデメリット、保険料控除ができなかった人の口コミ、年末調整で控除できる保険の種類や期限に間に合わなかったときの対策などを解説します。
目次
年末調整で保険料控除を申告しないとどうなる?デメリット2選
年末調整のときに「保険料控除」の手続きをすることで、税金が戻ってくるなどのメリットを得られますが、忘れると反対にデメリットが生じるので注意が必要です。 ここでは、年末調整で保険料控除の申告をしないとどのようなデメリットがあるのかについて解説します。
控除される税金が少なくなる
年末調整で保険料控除の手続きを忘れた場合、手続きさえすれば戻ってきたはずの「税金の還付」を受けることができなくなります。
保険料の支払い分が課税所得から控除されれば支払うはずのなかった過大な税金を負担することになり、お金がかかりやすい年末~年度末にかけて利用できる現金が少なくなってしまいます。
ふるさと納税ワンストップ特例制度が利用できなくなる
年末調整で保険料控除をし忘れた場合は確定申告で手続きをすることで改めて支払った保険料を課税所得から控除できるようになります。
ただし、年末調整ではなく確定申告をしてしまうと、「ふるさと納税ワンストップ特例」の申請が不適用になってしまう点に注意が必要です。
ふるさと納税ワンストップ特例とは、自治体に特例の申請をすることで、確定申告なしでも寄附金控除を受けられる制度のことです。
ワンストップ特例の申請をしているのに、年末調整で保険料控除の申請をしないで確定申告をすることになると、改めて確定申告でふるさと納税の寄附金控除の申請が必要になります。
すでに自治体にワンストップ特例の申請をしたあとでは二度手間になってしまうため、ワンストップ特例制度を利用するなら年末調整での保険料控除の手続きを忘れないようにしましょう。
関連記事:【ふるさと納税】ワンストップ特例申請と全国おすすめ返礼品
年末調整で保険料控除ができなかった人はいる?SNSの声を紹介
SNSをみてみると、実際に多くの方が年末調整で保険料控除ができずに苦労した経験があるようです。
ここではSNSで見つけた、年末調整で保険料控除が間に合わなかった失敗談や口コミを紹介します。
会社員が年末調整で保険料控除を申請し忘れた際って、源泉徴収票貰ってからe-taxで確定申告で保険料控除って流れで問題ないんだよね・・・?
税務署行かないのダメなのかな
引用:X
妻の年末調整で忘れたiDeCo、生命保険料、ふるさと納税分の確定申告完了!
・掛け金全額所得控除
・運用益非課税
・退職所得控除(一時金受取)
わが家は妻退職金無く上記の全て恩恵受けれるのでiDeCo を活用。
年齢、退職金有無、運用期間、所得、他税優遇枠等を鑑みて検討してみると良いですね。
引用:X
去年保険料控除の申請忘れたので、今年は絶対に忘れない。年末調整で簡単に処理できるところを確定申告自分で出さないといけなくなるのでな!
引用:X
年末調整とは
年末調整とは、会社員や公務員などが1年間で支払った所得税について、過不足を精算する手続きのことです。
1年間で毎月差し引かれている所得税はあくまでも概算なので、実際に支払われた所得と源泉徴収額は必ずしも一致しません。過不足があるかを確認したうえで精算する手続きが行われます。
会社員や公務員だけでなく、非正規のアルバイトやパート社員の場合でも、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を年末調整の期日までに提出していて以下の条件を満たす場合は年末調整をする必要があります。
- 1年を通して、または年の途中から年末まで働いている
- アルバイトの掛け持ちをしていない
- 退職した年に支払われた給与の総額が「103万円」以下であることなど
出典:国税庁|給与所得者(従業員)の方へ(令和6年分)
出典:国税庁|No.2665 年末調整の対象となる人
年末調整と確定申告の違い
会社員の方にとってはなじみのない制度ですが、年末調整のほかに「確定申告」もあります。 2つの制度は、以下のように目的が異なります。
- 年末調整:所得額に応じて税金を納めるための手続き
- 確定申告:1年間で支払った所得税の過不足を精算する手続き
給与所得者ではない自営業者・個人事業主は年末調整を利用することがなく、確定申告を通じて1年間の自分の所得と所得税の納税額を計算・申告します。 一方、会社員は所得税の過不足の計算を、年末調整を通じて会社が行ってくれます。ただ、会社員は確定申告とは無縁ではなく、以下のようなケースでは会社員や公務員などの給与所得者でも確定申告が必要です。
会社員や公務員でも確定申告が必要な条件
その年の給与収入が2,000万円以上ある
住宅ローン控除を初めて適用する
退職所得があった
副業の所得が20万円を超えた
株式投資で配当所得がある
2箇所以上の職場で給与を受け取っている など
出典:国税庁|確定申告が必要な方
なお、年末調整と確定申告では手続きする時期も以下のように異なります。
- 年末調整:所属する企業が指定する期日(一般的に11月末)まで
- 確定申告:翌年の2月16日から3月15日まで
年末調整で控除できる所得控除の種類
年末調整では、控除できる保険料があれば所得控除を受けて課税所得を圧縮することができます。課税所得が安くなれば本来納めるべき税額と源泉徴収額に違いが生じ、差額が返金されることになります。
ここでは、年間調整で控除できる所得控除の種類について解説します。
生命保険料控除
生命保険料控除は、納税者が生命保険料を支払った場合に、年末調整や確定申告での手続きをすることで所得税の還付が受けられる手続きのことです。
1年間に支払った保険料の一定額が所得控除になり、課税所得金額が安くなります。
所得税や住民税は「課税所得」に税率をかけて計算するため、生命保険料控除によって課税所得金額が減少すれば、所得税は安くなり、すでに支払っている源泉徴収額を下回る金額になれば差額が返金されます。
また翌年に納めることになる住民税についても、課税所得金額が減少することで減税につながります。
なお、生命保険料控除では2012年に税制改正にともなって控除の区分や控除の上限額が変更になりました。
そのため、2012年1月1日以降に契約された生命保険が「新制度」、2011年12月31日以前に契約された生命保険は旧制度が適用されます。
旧制度と新制度の違いを端的にまとめると以下のとおりです。
控除区分 | 控除額の上限 | |
---|---|---|
新契約 | ・新生命保険料控除 ・介護医療保険料控除 ・新個人年金保険料控除 | 1つの項目につき上限4万円 ※最高12万円 |
旧契約 | ・一般生命保険料控除 ・介護保障・医療保障など | 1つの項目につき上限5万円 ※最高12万円 |
一般生命保険料
一般生命保険料控除は、生存または死亡によって支払われる保険金・その他給付金にかかる保険料について控除される区分です。
受取人が契約者または配偶者、その他の親族(6親等以内の血族また3親等以内の姻族)である保険なら控除の対象になります。
出典:アフラック生命保険株式会社|生命保険料控除とは
介護医療保険料
介護医療保険料控除は2012年1月1日以降の新制度から採用された新しい区分です。
病気や身体障害などによって保険金が支払われる保険契約のうち、医療費の支払い事由に基因して保険金が支払われる保険が介護医療保険料控除の対象になります。
なお、保険金受取人についても一定の決まりがあり、内容は一般生命保険料控除と同様です。
個人年金保険料
個人年金保険料控除は、文字通り「個人年金保険」の保険料が控除される区分です。ただし、個人年金保険なら全てが対象というわけではなく、次の条件を全て満たしたうえで、「個人年金保険料税制適格特約」を付加していることが必要です。
- 年金受取人が契約者またはその配偶者のいずれかである。
- 年金受取人は被保険者と同一人物である。
- 保険料払込期間が10年以上である。
- 年金の種類が「確定年金」「有期年金」の場合、年金受取開始が60歳以降でかつ、年金受取期間が10年以上であること。
保険料払込期間が10年以上は必要であるため、一時払いを選択すると個人年金保険料控除は適用になりません。
また「個人年金保険料税制適格特約」を付加していない個人年金保険は「一般生命保険料控除」の対象になるため、上限いっぱいまでの控除はできなくなります。
社会保険料控除
社会保険料控除は健康保険料や国民年金保険料、厚生年金保険料、公務員共済などの社会保険の保険料に関する控除です。
配偶者や子ども、その他親族などの社会保険料を支払っている場合、社会保険料控除で申告した金額に応じて所得税や住民税が安くなります。
地震保険料控除
地震保険の保険料に関する控除です。地震保険は単独での加入ができないため、火災保険とセットで加入することになります。
ただし、地震保険料控除の対象になるのは地震保険料のみであり、火災保険料は対象になりません。
控除の上限は5万円であり、保険料が5万円を超える場合には一律5万円が控除されます。
【期限別】年末調整の期限が間に合わなかったときの対策
保険料控除の期限にはいくつかの種類があり、それによって対策もそれぞれ異なります。保険料控除の期限・期日について、到来する順番で並べてみると以下のようになります。
1.会社が設定した年末調整の必要書類提出のための期限
2.年末調整の期限(1月31日)
3.確定申告の期限(3月15日)
4.「更生の請求」の期限(確定申告の締め切りから5年以内)
ここでは、それぞれの期限ごとに、保険料控除の手続きが間に合わなかったときの対処法を紹介します。
1.会社の提出期限を過ぎた場合には再提出を交渉する
年末調整の最初の期限は、会社が定めた「必要書類の提出期限」です。
その期限がいつ到来するかは企業によって異なりますが、年末調整の手続きの期限である1月31日までに全社員の年末調整を終えられるように、一般的に「11月」の中旬~下旬が手続きの期限として設定されます。
会社が設定した期限から1月31日までのあいだなら、会社の締め切りに間に合わなくても再提出すれば受理される可能性があるでしょう。
ただ、締め切り後に提出すると会社側でも再計算などの手間がかかるため、まずは年末調整の担当者に再提出ができるかを丁寧に依頼してみましょう。
2.1月31日に間に合わない場合は確定申告をする
年末調整の期限である1月31日を過ぎてしまった場合、次の期限は確定申告の期限である「3月15日」です。
確定申告は原則として2月16日から3月15日までの1ヵ月ですが、最終日の3月15日が土日祝日にあたる場合には翌月曜日が期限になります。
年末調整で保険料控除ができなかった場合、自分で確定申告をすることによって所得控除を圧縮できるようになります。
3.確定申告も過ぎた場合は5年後まで修正申告ができる
確定申告の期限である3月15日(または翌月曜日)でも保険料控除ができなかった場合、「更生の請求」ができるあいだが最後のチャンスです。
更生の請求とは、確定申告の内容に誤りがあった場合に自己申告で修正できる手続きのことです。確定申告の期限から5年後までなら確定申告を再度おこなうことで保険料を控除することができます。
ただ、更生の請求まで先延ばしにすると必要書類を紛失するリスクがあるほか、更生のために何枚も書類を用意する必要があるなど面倒が増えます。
スムーズに手続きを終えるなら、会社が手続きの大半をしてくれる年末調整の期限に間に合わせるようにしましょう。
年末調整で保険料控除を提出する流れ
ここからは、実際に年末調整で保険料控除を提出する流れを「生命保険料控除」「地震保険料控除」「社会保険料控除」にわけて解説します。
まず、手元に年末調整前に会社から配られる「給与所得者の保険料控除申告書」を用意しましょう。
生命保険料控除の書き方
生命保険料控除は、保険料控除申告書の左半分に記載することになります。
まず、保険会社から送付される「生命保険料控除証明書」を用意します。
複数社に保険料を支払っている場合は、保険料を合算したうえで控除額を計算します。
生命保険料控除の計算方法
控除できる生命保険料控除は、年間で支払った保険料によって以下のとおりに計算しましょう。
所得税 | 住民税 | |||
一般生命保険料 介護医療保険料 個人年金保険料 | 年間の支払保険料 | 控除額 | 年間の支払い保険料 | 控除額 |
2万円以下 | 支払保険料全額 | 1万2,000円以下 | 支払保険料全額 | |
2万超4万円以下 | 支払保険料×1/2+1万円 | 1万2,000超3万2,000円以下 | 支払保険料×1/2+6,000円 | |
4万超8万円以下 | 支払保険料×1/4+2万円 | 3万2,000超5万6,000円以下 | 支払保険料×1/4+1万4,000円 | |
8万円超 | 一律4万円 | 5万6,000円超 | 一律2万8,000円 |
地震保険料控除の書き方
地震保険料控除は、保険料控除申告書の右上が記載箇所となります。
損害保険会社から送付される控除証明書には下記の内容が記載されており、転記すれば記載は完了します。
- 加入している保険会社
- 保険の種類
- 保険期間
- 契約者名
- 保険の対象になっている家屋に住んでいる人や家財を利用している者などの氏名
- 5の続柄
- 地震保険料か旧長期損害保険料に〇をつける
- 申告額
- のうち地震保険料の合計額
- のうち旧長期損害保険料の合計額
- の金額(5万円を超える場合は5万円)
- の金額を所定の計算式に当てはめた金額(1万5,000円を超える場合は1万5,000円)
- と の合計額(5万円を超える場合は5万円)
社会保険料控除の書き方
社会保険料控除については、自分と家族(自分と生計を一にする親族)の社会保険料のうち給与や賞与から天引きされたもの以外で自分が支払ったものを申告することになります。
つまり、自分の給与から天引きされた年金保険料や健康保険料などは申告しません。
子どもの国民年金保険料を親が支払ったようなケースでは申告が必要です。
申告書に記載する内容は以下のとおりです。
社会保険料の種類 保険料の支払先 支払った保険料を本来支払うべき人 3の続柄 申告額 申告額の合計
小規模企業共済等掛金控除も手続きする
企業型確定拠出年金や個人型確定拠出年金(iDeCo)を利用している場合、保険料控除申告書の右下の欄に記載します。
記載する対象は以下のうち、給与から天引きされていないものです。
独立行政法人中小企業基盤整備機構の共済契約の掛金 企業型年金加入者掛金 個人型年金加入者掛金(iDeCo) 心身障害者扶養共済制度に関する契約の掛金
掛金の全額が小規模企業共済等掛金控除の対象になるため、小規模企業共済等掛金払込証明書に記載された掛金の全額を合計して申告書に記載しましょう。
年末調整で保険料控除を受けるための注意点
年末調整で保険料控除を受ける際、事前に知っておきたい注意点がいくつかあります。
ここでは年末調整時の注意点を紹介するので、初めて保険料控除をする方は覚えておきましょう。
生命保険料控除の対象外の保険もある
生命保険料控除は、加入している全ての保険で適用されると決まったわけではありません。
以下のような保険は生命保険料控除の対象外になるため、注意が必要です。
生命保険料控除の対象外になる保険の例
貯蓄型保険で保険期間が5年未満
財形保険
団体信用生命保険 など
また、個人年金なのに個人年金保険料控除が適用されないケースもあります。具体的には、年金受取期間や保険料払込期間が10年未満の個人年金保険は、個人年金保険料控除ではなく「一般生命保険料控除」の対象です。
個人年金保険以外にすでに一般保険料控除で4万円分の控除を受けている場合、個人年金保険の分は控除されません。
転職した場合の年末調整は転職先でおこなう
年の途中で転職をした場合、1年のうちで勤務した事務所が転職前と転職後の2ヶ所以上になります。
年末調整が行われるのは、原則としてその時期に勤務している企業です。つまり、年末調整の時期に働いている会社(転職先の会社)で年末調整の手続きを行うことになります。
ただし、前の会社では何も用意しなくて良いということはなく、新しい職場の年末調整には前の職場の「給与所得の源泉徴収票」が必要です。退職する際は、新しい企業の年末調整がスムーズに進むよう、必ず給与所得の源泉徴収票を受け取りましょう。
年末調整と保険料控除に関するよくある質問
最後に、年末調整と保険料控除に関してよくある質問と回答をまとめました。
Q 🤔保険料控除証明書はいつ届く?
A.保険料控除の書類が届くタイミングは、保険料控除の種類や加入している保険会社などによって異なります。例えば生命保険料控除の場合、一般的には毎年10月中旬から1月上旬には控除証明書が手元に郵送されます。
また社会保険料控除証明書の受け取りタイミングも、基本的には生命保険料控除証明書と同様です。毎年10月下旬から11月上旬ころを目安に、日本年金機構からはがきまたは封書で控除証明書が送付されます。
Q 🤔保険料控除証明書を紛失した場合はどうなる?
A. 保険料控除の証明書を紛失した場合、発行元である保険会社や自治体に対応を相談してみましょう。例えば生命保険料控除の証明書を紛失した場合は、発行元の保険会社に連絡をして再発行をお願いできる場合があります。
問い合わせ方法は保険会社によって異なりますが、主にインターネットのマイページからの問い合わせや電話での問い合わせを利用できます。近くに保険会社の窓口があれば、店舗に訪問して担当者に直接再発行をお願いする方法もあります。
特に、すぐにでも再発行してもらわないと年末調整に間に合わないくらい切迫しているのであれば、直接訪問して担当者に相談したほうがネットや電話より早く対応してもらえる可能性があります。
まとめ
年末調整で保険料控除ができないと、本来なら還付されるはずの払い過ぎた税金が還付されず、実質的に手取り年収が下がってしまうデメリットがあります。
年末調整で控除できる保険料控除には「生命保険料控除」「社会保険料控除」「地震保険料控除」などがあり、正しい所得税を算出して精算するには全ての控除の申告が必要です。
所得税を払いすぎるような損をしないためにも、会社が定めた期限までに手続きを完了しましょう。また、万が一遅れたときの対処法を知っておくことで、手続き遅れをカバーして所得税の還付を受けられる可能性が上がります。