【現金2万円給付案】自民党が参院選の公約に│誰がいくらもらえる?批判される理由を整理、物価高騰のなかで私達ができること

石破首相は「全国民に一律現金2万円を給付する」という物価高対策を、7月の参議院選挙の自民党の公約に掲げることを発表しました。
本記事ではこの「現金2万円給付案」の内容を整理しつつ、なぜ今このような政策が出てきたのか、またSNSや有識者から挙がっている批判や懸念点について整理します。
また物価高で生活費が高騰するなか、給付金だけに頼らない家計の見直し方法も紹介します。
現金2万円給付案とは?
現段階で検討されている内容は、以下のとおりです。所得に関わらず全国民に一律給付し、さらに生活費の負担が多い子どものいる世帯、住民税非課税世帯(※)には追加給付を行う案です。
給付対象 | 給付額 |
---|---|
全国民(所得制限なし) | 1人あたり2万円 |
+住民税非課税世帯のおとな | +1人あたり2万円(合計4万円) |
+18歳以下の子ども | +1人あたり2万円(合計4万円) |
※住民税非課税世帯:厚生労働省「国民生活基礎調査」(2022年)によると、総世帯の24.2%が住民税非課税世帯
たとえば「両親+子ども2人」の家庭の場合、合計12万円が給付されることになります。

抜粋:テレ朝NEWS│1人2万円現金給付と消費減税 物価高対策で経済効果は? 徹底試算で見えた問題点
現金2万円給付案、目的は物価高の負担を軽減すること
この「現金2万円給付案」は、昨今国民の多くを苦しめている物価高に対する対策として掲げられています。
現金2万円の根拠は?
では、なぜ2万円なのでしょうか。政府がその根拠として説明しているのは、
食費にかかる1年間の消費税負担額が1人あたり2万円程度なので、その負担を補うため
という内容です。
2024年の総務省の家計調査をもとにした自民党の試算では、食費(軽減税率対象)に対する消費税額は1人あたり約2万円程度。この数値をふまえ「現金2万円給付案」が設定されたようです。

抜粋:TBS NEWS DIG│現金給付案2万円 年間の食費にかかる消費税と仮定すると…食費1日685円「全然足りない」「お話にならない」と街の声
消費税減税よりも効果的
また政府は「消費税の軽減措置(例:税率8%→0%)」よりも、一時金給付のほうが迅速で、財源への影響も限定的で望ましい」としています。
赤字国債を使わない財源で可能
この現金2万円給付は、総額にして3兆円程度と見積もられていますが、その財源は、2024年度の税収の上振れ分と、政府は説明しています。赤字国債の発行なしで約3兆円規模の給付が可能との見通しも、今回の決定の背景にあります。
なぜ批判されているのか? 主な6つの論点を詳しく解説
今回の現金2万円給付案に対しては、ネットニュースやSNS上で、さまざまな批判や懸念が出ています。どのような声があるのか、整理してみました。
「選挙対策」「バラマキ」
一番多いのは「選挙対策」という批判の声でしょう。現金2万円給付の補正予算案の成立が2025年夏の参院選後(現与党が勝利した場合)と報じられており、与党が支持拡大を狙った「バラマキ政策」だとする声が強く上がっています。
特に、過去に同様の給付を打ち出していた公明党の姿勢が再び注目され「公明党は選挙のたびに給付を言い出す」といった批判も多く見られます。

日本経済新聞│〈参院選2025〉成長戦略不在の論戦へ 自民が公約発表 現金給付1人2万円 30年度に賃金100万円増
本当に困っている人への給付なのか
政府は、物価高で生活が圧迫されている人達を支援すると強調し、前述の通り、住民税非課税世帯に対しては、さらに2万円が給付される案となっています。
しかし、住民税非課税世帯のうち、4分の3は高齢者世帯と言われています。つまり、自民党の支持層の中心が高齢者であることをふまえると、参院選の票集めなのでは?と言われても不思議ではないのです。
住民税非課税世帯のうち75%は年金生活世帯
- 厚生労働省「国民生活基礎調査」(2022年)によると、総世帯の24.2%が住民税非課税世帯。
- 住民税非課税世帯の割合を年齢別にみると、20歳代が24.2%、30歳代9.2%、40歳代9.2%、50歳代11.3%、60歳代19.2%、70歳代34.9%、80歳以上44.7%
- 住民税非課税世帯のうち74.7%が65歳以上。つまり、大半が年金生活世帯
「所得制限がないのは不公平」
今回は「全国民一律」での給付が前提となっているため、高所得層にも2万円が配られます。
これに対し「なぜ困っていない人にも渡すのか」「本当に必要な人への支援が薄まる」といった政策の公平性への疑問が寄せられています。
一方で、過去の所得制限付き給付では申請が複雑化し、手続き漏れが多発した反省もあるため、「簡易な一律給付」とする意義もあるとされています。
「消費税減税のほうが効果的では?」
一部では、「そもそも現金を一時的にばらまくより、消費税を軽減したほうがよほど家計の助けになる」との声もあります。
実際、消費税率を1〜2%引き下げた場合の経済効果は数兆円規模とも試算されており、給付金以上の波及効果が期待できます。
ただし、減税には法改正や制度変更が必要で、時間もかかるうえ、財源の裏付けがより厳しく問われるという事情もあります。
「マイナンバー口座との紐付け強化が前提」
今回の給付では、マイナンバーに紐づけた「公金受取口座」への振込が想定されています。これにより迅速な給付を図るとされていますが、以下のような問題が指摘されています。
- 未登録者が相当数いるため、事前の登録キャンペーンが必要
- マイナンバーの利用に抵抗感を持つ人が根強くいる
- セキュリティや誤送金への不安が払拭されていない
特に、ネット環境に不慣れな層にとっては、登録作業自体がハードルになる可能性があります。
「自治体の事務負担が重すぎる」
過去の特別定額給付金(2020年のコロナ禍)のときと同様に、給付の実務は市区町村の自治体が担うことになります。これにより、以下のような課題が想定されます。
- システム整備・郵送・申請受付にかかるコストと労力
- 人員不足の中で通常業務との両立が困難
- 前回給付時のように「遅配」「対応ミス」が再発する可能性
とくに中小自治体では、「またこの業務か」との疲弊感があり、自治体関係者からは早くも現場無視の政策だとの声があがっています。
「金額が少なすぎる」「効果が限定的」
2万円の給付額は、一見ありがたく感じるかもしれませんが、「食費1〜2週間分にも満たない」「物価上昇のスピードに対して不十分」といった不満も目立ちます。
1日あたりに換算すると約66円ほど。消費税率1%の引き下げと比べると効果は限定的で、根本的な負担軽減にはならないとの見方も多くあります。
給付はいつ? 今後のスケジュール
現時点では給付の正式決定には至っていませんが、政府・与党の方針としては以下の流れが想定されています。
時期 | 内容 |
---|---|
2025年夏 | 参院選実施 |
2025年秋 | 補正予算案の成立・制度設計 |
2025年冬以降 | 給付開始予定(年内めざす) |
給付金だけに頼らず、私たちが今できること
現金2万円給付案は、現段階では決定事項ではありません。参院選後に仮に決定されたとしても、一時的な家計支援としてありがたいものではありますが、それだけで物価高の影響すべてをカバーするのは難しいでしょう。
給付金を「一時的な補填」として受け取りつつも、「長期的な目線」で家計の見直しに取り組む必要があります。
家計の支出を可視化する
まずは支出の「見える化」をしましょう。家計の見直しは、1カ月の支出を正確に把握することから始まります。「毎月、何にいくら使っているのか」を明確にして「何をどう見直せばいいのか」を判断するためです。
関連:支出の見える化、そのやり方を徹底解説
固定費の見直しをする
スマホ料金、電気代、保険料などの「毎月一定額かかるお金」を一度見直してみると、大きな節約効果が期待できます。
関連:スマホ料金や電気代、保険料など、固定費ごとに節約手順を徹底解説
固定費見直しのなかでも、住居費(家賃・住宅ローン)、保険料(生命保険・医療保険)、自動車費(自動車保険)の見直しについては、専門知識・商品知識などが必要となります。一人で見直しに取り組むのが難しい分野は、ファイナンシャルプランナー(FP)などの専門家に無料相談する方法があることを知っておけば、効率良く固定費の見直しを進めることができるでしょう。