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154万人が持つ「精神障害者保健福祉手帳(こころの手帳)」—手帳を持つとどうなる?

作成日
154万人が持つ「精神障害者保健福祉手帳(こころの手帳)」—手帳を持つとどうなる?

精神障害者保健福祉手帳の所持者が、154万7,433人を超えました(令和6年度末)。前の年より10万9,340人ふえ、増加率は7.6%にのぼります。精神障害者保健福祉手帳とは何か?どうして増加したいるのか。手帳を持ったらどうなるのか解説します。

精神障害者保健福祉手帳―他手帳・等級比較

等級別にみると、増加の中心は3級(日常生活に一定の制限がある程度)で、前年比10.0%増という高い伸びを示しています。一方、最も重度の1級は1.9%増にとどまっており、軽〜中等度の障害が急増していることがわかります。

精神障害者保健福祉手帳 等級別所持者数(令和6年度末)
等級所持者数前年比増加率状態の概要
1級139,406人+1.9%日常生活がほぼ自力でできない
2級897,292人+7.2%日常生活に著しい制限がある
3級510,735人+10.0%社会生活に一定の制限がある
合計1,547,433人+7.6%前年比10万人以上の増加

出典:
厚生労働省「障害者手帳」
厚生労働省「令和6 (2024) 年度衛生行政報告例の概況・精神保健福祉関係」

3種類の障害者手帳の比較

日本には障害者手帳が3種類あります。しかし現在、明確に急増しているのは精神障害者保健福祉手帳となります。2024年度末の数値が発表されている他の2種類の手帳と比べると、増加率の高さが際立ちます。

3種類の障害者手帳 増減比較(令和6年度)
手帳の種類前年比増減率増減人数
精神障害者保健福祉手帳+7.6%+109,340人
療育手帳+3.1%+39,881人
身体障害者手帳▲2.3%-108,137人

出典:厚生労働省「令和6(2024)年度福祉行政報告例の概況」

3級(軽度・中等度)の突出した伸び

精神障害者手帳の中でも、特に3級の増加率が突出しています。

精神障害者保健福祉手帳 等級別増加率の比較
等級重さの目安前年比増加率特徴
1級重度+1.9%増加は小幅で安定
2級中等度+7.2%全体平均を上回る増加
3級軽度+10.0%突出した伸び・発達障害層が牽引

出典:厚生労働省「令和6年度衛生行政報告例」

まとめ:この増加をどう読むか 「精神障害(特に軽度の3級)だけが、療育手帳の2倍以上のスピードで急拡大している」——この点が、現在の増加率を理解するうえで最も重要なポイントです。

なぜ、これほどふえているのか

3つの主な背景 社会認識の変化・発達障害の認知拡大・障害者雇用制度の整備が重なって、申請者が急増しています。

1.社会認識(偏見)の変化

かつて精神科への受診は、本人にとっても家族にとっても、ひとつの決断でした。しかしいまは、こころの不調を抱えることは誰にでも起こりうる、という認識が社会に広まっています。受診のハードルが下がり、診断を受ける人がふえた結果、手帳の申請者もふえています。

2.発達障害への理解がすすんでいる

ASDやADHDなど、以前は「性格の問題」とされていた特性が、医学的に診断されるようになりました。企業で働く発達障害のある人のうち、81.7%がこの手帳を所持しているというデータもあります。

3. 障害者雇用制度の整備

2018年から障害者雇用の法定率の計算に精神障害者が加わったことで、手帳を持って働くという選択が、現実的なキャリアの道として広まりました(出典:障害者雇用促進法改正)。「障害を隠して無理をする」より「配慮を受けながら長く働く」という発想へのシフトが起きています。

うつ病でも、手帳はもらえる?

結論:もらえます うつ病は「気分障害」として手帳の対象疾患に含まれており、所持者の疾患別内訳でも気分障害は17.0%と最も多くなっています。

ただし、診断名だけで決まるわけではありません。審査でみられるのは「その症状が、日常生活にどれだけ影響しているか」です。判断の基準となる具体的な状態の例を紹介します。

  • 気分の落ちこみが続き、入浴や着替えが難しい状態
  • 集中力が低下して、仕事でのミスが続く状態
  • 通院や服薬の管理を自分でするのが不安定な状態
  • 対人関係を遮断し、外出がほぼできない状態

手帳を持つ、メリットとデメリット

ここからは手帳を持つとどうなるのかについて主なメリットとデメリットを解説します。

✔ メリット

  • 主な経済的・就労メリット
  • 所得税・住民税の障害者控除(1級:所得税40万円、住民税30万円)
  • 公共交通機関の運賃割引、NHK受信料の免除
  • 携帯電話料金の割引、映画館などのレジャー割引
  • 障害者雇用枠での求職が可能になります
  • 職場への合理的配慮(短時間勤務・通院休暇など)を法的に求められます
出典:各自治体・制度案内、障害者雇用促進法

✖ デメリット・注意点

  • 有効期限2年ごとに医師の診断書が必要です(費用:3,000〜7,000円程度)
  • 民間の生命保険・医療保険の新規加入に影響することがあります
  • 住宅ローン審査(団体信用生命保険)で不利になる場合があります
  • 「障害者」というラベルへの心理的なためらいを感じる方もいます
出典:各医療機関の診断書料目安、保険各社の引受基準
保険・ローンへの影響は「手帳そのもの」ではなく「疾患の既往」によります 手帳の所持が直接的に権利を制限することは制度上ありません。ただし、民間契約においては精神疾患の既往が審査に影響することがあります。近年は「引受基準緩和型」の保険商品も増えています。

手帳は選択肢のひとつです

精神障害者手帳が急増している背景には、社会の変化や制度の整備があります。これは「精神疾患が増えた」というよりも、「これまで見えていなかった困難が、ようやく可視化されてきた」と捉えることもできます。

手帳を取得すれば、税控除や交通割引などの経済的なメリットに加え、障害者雇用枠の活用や職場への合理的配慮といった就労面での支援も受けられます。一方で、更新の手間や保険への影響など、事前に知っておくべき注意点もあります。手帳はあくまでも道具であり、持つこと自体が目的ではありません。

取得するかどうかは、主治医や支援者とともに、ご自身の生活状況や目的をふまえて判断することをおすすめします。大切なのは「選択肢があることを知ること」といえます。