トランプ来日は“お金の交渉” -日本の家計に何が起きる?
本日10月27日から29日まで、アメリカのドナルド・トランプ大統領が日本を訪問しています。
多くの国民の期待を背負って新しく就任した高市早苗総理との初会談ということで、「日米同盟の再強化」「信頼関係の再構築」といった言葉が表に並んでいます。しかし実際にはその裏で、日本がどのような経済的・安全保障上の負担を引き受けるのかをめぐる、難しい話し合いになりそうです。
表のテーマは「友情」、裏のテーマは「請求書」
今回の首脳会談では、大きく2つの請求書がテーブルに乗ると見られています。
1.関税交渉で日本から引き出した5,500億ドルの投資。
2.日本の防衛費増額の要求
参照:APnews│In Japan and South Korea,Trump will promote big investment.But the details are still not clear.
トランプ大統領はこの2つを軸に、「アメリカの利益」を最大化しようとしており、同盟国・日本はその“支払う側”として交渉に臨む形です。
日本政府は「これは未来への投資だ」と説明していますが、実際には関税を引き下げてもらう代わりに引き出された政治的な取引でもあります。
1.日本が投資の中身は「ピックアップトラックと天然ガス」
5500億ドルのは、トランプ政権が計画していた対日関税率(25%)を15%に引き下げるための交換条件として日本から引き出したものです。
この投資は「金融投資」ではなく、実際にアメリカ製品を購入する形に変わりつつあります。
具体的には、
- アメリカ製のピックアップトラック
- 米国産の大豆
- 液化天然ガス(LNG)
- 造船技術の導入
といった“目に見えるモノ”です。
つまり、日本が払うお金はそのままアメリカの雇用や産業を支える仕組みになるわけです。 このことにより、アメリカ国内ではトランプ大統領の国内の不満を和らげる形となりますす。
一方で日本にとっては、円安が進む中でこれらの輸入品が値上がりしやすく、 「アメリカとの交渉」が 家計のエネルギー価格にもじわじわ波及するリスクがあります。
エネルギーと物価にも“波紋”
上述のとおり、トランプ氏との取引の中には、米国産LNG(天然ガス)の長期購入も含まれています。
これは一見すると日本のエネルギー安全保障にプラスですが、為替が150円台の円安の中では「高値での契約」になります。
結果として、電気代やガス代に跳ね返る可能性があります。
また、米国製の農産物輸入が増えれば、国産農業への影響や食品価格の変動もあり得ます。
つまり、首脳会談で交わされる「投資」や「購入の約束」は、遠い外交の話ではなく、毎月の請求書にも影響する“家計外交” なのです。
2.防衛費も上がる?日本はどこまで負担するか問題
高市総理は10月24日の所信表明演説で、防衛費を国内総生産(GDP)比2%に引き上げる時期を、当初の2027年度から2年前倒しし2025年度中に実現する方針を発表しました。
すでに2025年度の防衛関連費は約9兆9,000億円(GDP比1.8%)に達しており、約1兆円を追加して2%水準に引き上げる考えです。高市首相は「新しい戦い方の出現など安全保障環境が大きく変化している。主体的に防衛力を強化する必要がある」と強調しました。
こうした方針の背景には、トランプ政権が同盟国に防衛費の増額を強く求めてきた経緯があります。
高市政権はこうした背景を踏まえ、防衛費を増やすことで日米同盟の信頼を深め、交渉を有利に進めたい考えです。高市総理はトランプ氏との会談で「日本の防衛力をしっかりと充実させる」と直接伝える方針です。
米国が同盟国に対しGDP比5%への引き上げを求める中、日本の2%で落ち着くのか。今回の首脳会談の大きな焦点となります。さらに2%で約束した場合、そのお金はどこからでてくるのでしょうか?私たちの税金や社会保障費の負担増という可能性も考えられます。
参照:Japantimes│Pentagon says Japan must meet “global standard”and spend 5%GDP on defense
結論:外交と家計はつながっている
今回のトランプ大統領の来日は、「友情の再確認」というよりも「お金と安全保障の交渉」の色が濃いイベントです。高市政権にとっての課題は、
- 5500億ドルの投資をどう“日本に利益が残る形”に再設計できるか
- 防衛費増額はGDPの2%で合意できるのか。できた場合財源はどうするのか?
- エネルギーや物価への家計インパクトを最小限に抑えられるか
この3つに尽きます。
外交の席で交わされる数字は、やがて税金、電気代、ガソリン代、物価といった形で家計に跳ね返ってきます。
「遠い国のニュース」ではなく、この来日とその結果を、私たちの将来の生活を左右する“お金のリアル”として見ておく必要がありますね。
