みずほ証券インサイダー疑惑ー新NISAで個別株を始めた人が「うっかり」加害者にならないためには
2026年2月、日本を代表する大手証券会社であるみずほ証券の投資銀行部門において、社員が業務上の未公開情報を利用して不正な取引を行った疑いで、証券取引等監視委員会による強制調査が行われました。
市場の「門番」であるべきみずほ証券の投資銀行部門で強制調査が行われたというニュースは、新NISAで投資を始めたばかりの人にとっては「市場は公平なの?」という疑問を抱かせるものでした。
しかし、こうした不祥事は決して他人事ではありません。今回は、インサイダー取引の基礎知識、歴史、そして私たちが「うっかり」加害者にならないための注意点を整理しました。
出典:
みずほ証券株式会社│本日の一部報道について(2026年2月16日)
日経新聞│みずほ証券社員がインサイダー取引関与か 監視委が強制調査
インサイダー取引とは?
インサイダー取引(内部者取引)とは、上場企業の役職員などが、株価に影響を与えるような「重要事実」を仕事などを通じて知り、それが公表される前に株を売買することを指します。
なぜ禁止されているのか?
もし一部の人が「絶対に上がる(下がる)ニュース」を事前に知って儲けることができれば、何も知らない一般投資家は、「イカサマのトランプゲーム」に参加させられているような状態になります。
誰もそんな不公平な市場でお金を出したくなくなれば、市場そのものが壊れてしまうため、法律(金融商品取引法)で厳しく禁止されています。
規制の歴史:事件が起きるたびに厳しくなってきた
日本のインサイダー取引規制は、大きな事件が起きるたびにルールが強化されてきた歴史があります。
| 年代 | 主な事件 | 影響と変化 |
|---|---|---|
| 1988年 | リクルート事件 | それまで曖昧だった規制に刑事罰が導入されました。 |
| 2008年 | NHK記者による事件 | 情報を扱うメディアや外部者への監視も強化されました。 |
| 2012年 | 大手証券の増資インサイダー | 「情報を漏らした側」や「勧めた側」も罰せられるよう法改正されました。 |
| 2024年〜 | 東証職員や金融庁出向者の摘発 | 市場の監視役側の不正が相次ぎ、デジタル監視が高度化しています。 |
「少額なら大丈夫」は間違い!意外な落とし穴
「自分はプロじゃないし、取引額も小さいから関係ない」と思っていませんか?証券取引所(JPX)の指針では、以下のケースでもすべて「違反」とみなされます。
- 利益が出ていなくても、あるいは損失が出ても違反:
取引の結果、利益が数万円程度の少額だったり、逆に損失が出てしまった場合でも、公表前に売買した時点でアウトです。実際に利益が4万円と少額でも課徴金(罰金)が出された事例があります。 - 「1株(1単元)」だけの売買でも違反:
取引の数量は関係ありません。たとえ100株(1単元)といった少量の売買であっても、重要事実を知って売買すれば摘発の対象となります。 - 売らずに「持ち続けて」いても違反:
「ニュースが出た後も売らずにずっと持っていればセーフ」というルールはありません。未公表の事実を知って買い付けたその瞬間に違反が成立します。
参照:日本取引所グループ│インサイダー取引のFAQ規制対象となる取引
新NISAで個別株を始めた人が気を付けるべき3つのこと
せっかく始めた新NISAで、知らず知らずのうちに法に触れてしまう「うっかりインサイダー」を防ぐために、特に個別株投資に挑戦する方が日常で気を付けるべき3つのポイントを整理しました。
1. 知人からの「耳より情報」に飛びつかない
友人や親戚が上場企業に勤めていて、「実はうちの会社、近々すごい発表があるんだ」と教えてくれた場合、その情報は「未公開の重要事実」である可能性があります。それを聞いて売買すると、あなた自身が「情報受領者」として処罰の対象になります。
2.SNSの「お得情報」を安易に信じない
「多くの人が目にできるSNSに流れているなら、それはもう公表されているのと同じではないか」と感じられるかもしれませんが、SNS上の「まだニュースになっていない情報」を基に取引を行うことは、意図せずとも「うっかりインサイダー」として刑事罰や課徴金の対象となる大きなリスクを伴います。
日本の法律(金融商品取引法)には「公表」の定義があり、SNSへの投稿は「公表」とは認められません。
3. 家族の仕事内容には深入りしない
配偶者の勤務先で大きなプロジェクトが進んでいることを知り、その会社の株を買う。これも典型的なNGパターンです。
「家族間の会話ならバレないだろう」と考えるのは禁物です。証券取引等監視委員会は、高度な監視システムを駆使しており、重要事実が公表される前に行われる不自然な売買や資金の流れを厳格にモニタリングしています。
まとめ:怪しい情報とは距離を置く
インサイダー取引は、市場全体の「共有財産」である情報の公平性を侵害する行為です。大手証券の不祥事は憤りを感じるものですが、私たちが目指すべきは、公開されている決算書類や公式発表をしっかり読み解く力を養うことです。
新NISAという素晴らしい制度を長く活用するためにも、「自分だけが知っている特別な話」には耳を貸さず、正々堂々と資産を築いていきましょう。
